無意識さんとともに

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光の人〜H神父⑴

人間には、「虚無」「支配者」「光の人」の3つのタイプがあると言う(「支配されちゃう人たち」大嶋信頼)。

私は、今まで、確実にこの人は「光の人」だという人はひとりしか会ったことがない。

キリスト教世界で、多くの牧師や神父に会ったが、ほとんどが「虚無」か「支配者」だった。

前の妻からクリスマスに離婚届が送られてきて、もう死んでしまいたいという絶望のどん底に落ち込んでいた時、私はありとあらゆる教会の牧師や神父に電話したことがある。

電話に出ない牧師や神父も多かった。電話に出たとしても、もう一刻も早く切りたいという相手の思いが伝わってくる。

こちらが必死であるのが伝わると、相手がビビっているのが感じられる。

それで、聖書のお決まりの言葉を言ってきたり、「離婚するのは罪だから離婚してはいけない」ということを言ってきたり、「あなたは私の信徒でないから答えられない」と言ってきたり、離婚は許されるかどうかの神学論を言ってきたり…

聖人という噂の神父にも電話したが、あまりに乱暴なヤクザのような人が電話に出てきたので神父本人だとは思わなかった。
あまりにショックでもうよく覚えていないが、

「てめえが教会の掟に従う気があるかどうかだろ」みたいなことを言っていたような気がする。

 

最後の最後に、カリスマ神父として有名なH神父に電話した。もうほとんど期待してなかった。案の定、受付の人が出て、「神父様に伝えておくので、電話番号を教えてください」と言われた。『きっと、かかってはこないだろうな』と私は何だかそう思った。

ところが、仕事中に、電話があった。そうして、私の時間がある翌日の昼間に電話を神父の方からかけてくれると言った。

次の日の昼間、神父と話した時、電話の向こうで神父は私の話を肯定も否定もせずありのままにじっと聞いてくれているのを感じた。私は、促されて今までの話をそのままに話した。私のとても長い話が終わると、神父はひとこと言った。

「私も同じ苦しみを味わっています」

それが何を意味しているのかわからなかったが、真っ暗だった心の中に光が差し込んできた。

『この人は、神を本当に本気で信じている』と思った。そうして、私のあまりに悲惨な絶望的な話に全く臆することがなかった。

「いいじゃないですか、離婚してもしなくても」

プロテスタントでもカトリックでも離婚は罪である。こんなふうに言う牧師や神父は一人として知らなかった。

それから、何を話したのかは覚えていない。けれども、電話する前は固くもう死ぬしかないと思っていた私の心が生きようと思いに変わっていることがあまりに不思議だった。