無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 92〜U18 お友達

ぼくはずんずんと歩いていく。それでも、佐伯さんは後からついてくる。どこまでついてくる気だと思ってしまう、家が知られたら嫌なので、あえて巻くように中学校の隣にある団地の中をジグザグに進む。

「待ってくださいよ〜」

その声も煩わしく、ぼくは後ろを振り返らずにすごい速度で歩き去る。

後ろに気配を感じなくなったので、振り返ると、遠くで佐伯さんは両膝に両手をついてうなだれていた。

その姿を見た瞬間、何だかずっと感じていた怒りがさっと消えてしまって、ぼくは彼女のところまで歩み寄る。

「戻って来てくれたんですね〜。そのまま置いていかれると思っちゃいました」

両手で泣くふりをして言う。言動のひとつひとつがあざとい。

「ずっとついてくるけど、何の用?」

今日は神楽坂さんに会う日ではなかったが、ぼくだって忙しい。わざといらいらしげな気持ちを込めて言ってみた。

「部長にご相談があるんです」

「どんなこと?」

「立ち話も何ですから、あそこの公園のベンチに座りませんか?」

神楽坂さんと話したことのある公園のベンチを白い指で指した。

「わかった」

このまま、どこまでもついてきても困るのでそう言わざるを得ない。

ぼくが距離をあけて右側に座ると、すっと距離をつめてくる。

何だか近い。

「前に神楽坂さんとこのベンチに座ってましたよね」

こいつはストーカーなんじゃないかと思ったりするが、まあ、考えすぎ。偶然、見かけただけだろう。

「それはいいから。相談って何?」

「わかりました。部長って不良って言われていますよね?」

ちょっとムッとして、思わず顔に表れているんじゃないかと思ってしまう。

「噂だよ」

「わかってますよ、根も葉もない噂だって。紗奈も同じような噂たてられているんです」

それは何となくわかる、人は見た目で判断するものだ、子どもでも大人でも。

「不良っていう噂?」

「いいえ、そうじゃなくて…」

声が小さくなって、しりすぼみになる。

「ビッチという噂です」

今になって、佐伯さんのスカートが短いことに気づいた。そりゃそうだろうねと思ってしまった。だけど、それは言えないから黙っていた。

「それで、ハブられていていつもひとりぼっちで…部長のお友達にしてくれませんか?」

「なんでぼく?」

「それは、部長も不良と言われていてひとりぼっちだから、気持ちがわかるんじゃないかと」

ちょっとむかっときたが、まあそのとおりだから返す言葉もない。

「それで、友達になりたいと…」

ぼくは想像してみた、今でさえ、不良と言われていて、不純異性交遊をしていると言われていている。それが、佐伯さんと友達になって一緒にいるところを見られたら、もっとひどい言われようになるんじゃないだろうか。

「だめでしょうか?」

急に、佐伯さんの言葉からあざとさが消えて、何だか真剣なものに聞こえた。何だか、そこにいるのは雨に濡れて震えている子犬のような気がした。

「わかった、いいよ」

ぼくはとんでもない決断をしてしまったのかもしれない。