無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 145〜H46 最初で最後のデートへ

『これで最後のデートかあ』

わたしは鏡を見ながら、髪をブラッシングしている。

付き合ってからデートとらしいものはしていない。だから、これはうえっちと再会して付き合ってから最初で最後のデートになる。

わたしはちょっと落ち込みそうになる。

『自分で決めたんだから』

わたしは頬を両手で軽く叩いて気合を入れてみた。

鏡の中のわたしもしゃんとして見えた。

秋津駅に行って改札口でうえっちを待つ。

しばらくして、うえっちが現れた。黒のスリムジーンズに、薄青のオックスフォードシャツ。中学生にしては、大人びた服装だ。

手をあげると、うえっちも手をあげてくる。

そのまま、わたしが改札を通る。わたしはうえっちの温もりを覚えていたくて、手を差し出すとうえっちは優しく手を握ってくれた。

日曜日だからか、構内に人の数は少ない。若い母親と男の子と若い父親が、3人で手を繋ぎながら、わたしたちの前を歩いていく。

サンダーバードの歌、歌って」

男の子が言う。

サンダーバード聞いたことはないが、何かの番組だろうか?

若い父親がハミングだけで歌を奏でる。

何だか、マーチのような歌である。

男の子は喜んでいるのか、声を出して笑う。

「よかったね、良樹」

若いお母さんが子どもを見ながら、さも愛しくてたまらないように言う。

ごくごく普通の家族、わたしもこんな普通の家族を持つ日が来るのだろうか…もしかしたら、うえっちと。

手を繋いで隣を歩いているうえっちの顔を見つめてみる。

「なに?」

うえっちはわたしの視線に気がついたのか、言葉を投げかけてくる。

「ううん、何でもない」

気がつくと、前を歩いていた若い家族連れはどこかに行ってしまった。わたしたちはわたしたちのペースで歩いていくだけだ。

秋の日差しが穏やかに差していて、空気も澄んでいるようだ。

電車で向かう途中、わたしはセブンティーンで読んだ心理テストをうえっちにしてみる。

うえっちには言っていないが、ふたりの恋愛相性度を調べるテストだ。

『これから別れるのに、わたしったら、何をしているのかしら?』

でも、それはそれ、これはこれだ。

相性度が90%以上と出たので、思わずニヤニヤしている自分に気づく。

うえっちにむっつりスケベと言ったけれど、これじゃ、むっつりなのは自分のことかもしれない。

これから行くディズニーランド、そこに行くのがうれしいような悲しいような。

永遠に着かなければいいのに、そんなことも思ってしまう。

けれど、そんな無限のループを繰り返すというアニメみたいなことが起こるわけもなく、わたしたちは目的地の駅に着いた。