無意識さんとともに

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聖人A 27 親友

高1の時、僕には福岡君という親友ができた。

彼とは何でも話すことができた。

福岡君の親は自衛隊の幹部らしく、割と裕福だった。もっとも、母子家庭の僕からしたら、ほとんど誰も彼も皆裕福に見えたのだったが。

映画や音楽を愛好していた。僕は映画館に行ったりレコードを買ったりするお金もままならなかったから、最近、観た映画の話を聞いたり、いいと思ったレコードを貸してくれるのがとてもうれしかった。

ある時、ビートルズAbbey Roadというレコードを貸してくれた。

僕は初めて聞くビートルズがうれしくてたまらなかった、母は悪魔の音楽(何でもジョンレノンが自分はキリストよりも有名だとか言ったことを母は根に持って、それ以後、ビートルズは悪魔の音楽と言っていた)と言って嫌っていたが、妹は僕と一緒に喜んで聴いていた。

僕は、借りたレコードを粗末なレコードプレーヤーにかけて、何回も何回も聞いていたが、ある時、針のついたアームを手を滑らせてレコードに落としてしまった。

あわててレコードを取り上げてみると、黒い盤面にくっきり傷がついていた。

僕は冷たい嫌な汗が背中に流れるのを感じた。

母に頭を下げて、お小遣いを前借りさせてくれと頼み込んだ。

「そんな悪魔の音楽を聴いているからよ」

母はにべもなくそう断ったが、人のものを傷つけたままでいることはクリスチャンとして神様の証にならないと言って、結局、お小遣いを前借りさせてくれた。

僕は、レコードを福岡君に返す時、事情を話して、茶封筒に入れたお金を渡そうとした。

彼は受け取ろうとしない。

僕がどうしても言うと、彼は言った。

「それなら、このお金で一緒に映画を観に行かないか?」

僕は、ほとんど映画館に行ったことがなかった。だから、好奇心からYESと言ってしまった。

福岡君と行ったのは、吉祥寺の映画館だった。

男2人で観たのは、「ロミオとジュリエット」だった。僕は、この映画にヌードシーンがあることを知らなかった、今話題になっているように出演者も知らなかったようだが。

そのことは、当然、僕の良心を混乱させた。

僕は家に帰ってから、部屋で正座して神に祈り、赦しを請うた。

また、福岡君はオカルトにはまっていたことも、僕には大きな問題だった。

「家で寝ている時、気がつくと上から自分の体を見ているんだ」

「そんなことあるの?」

「あるんだよ、それで僕は浮かんだまま、ドアを通り抜けて、隣の部屋で寝ている親を上から見たんだが、すると、『そこまで』という声が聞こえて戻ってきたんだ」

僕はその話を聞きながら、心の中で激しく葛藤していた。