無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 75 蛍

一緒に暮らす、そんなことをしたら、もうキリスト教の世界には戻れない。

そうしたら、もうはざまではない。普通の人の世界に、クリスチャンが罪のこの世と呼ぶ世界に完全に足を踏み入れることになる。

光や古くから知っている人たちに何て思われるだろうか?

神も私たちも捨てて、不信仰と罪の世界に堕ちていった人たち、そんなレッテルが貼られるに違いない。

そう思うと怖くなる。

でも、だからと言って、自分はいつかまたキリスト教の世界に戻ろうと思っているのだろうか?

いや、それはない。

あの世界に逆戻りして、罪を犯すまいとして呼吸をすることさえはばかられる、そんなのはもうまっぴらごめんだ。

そうして、そんなことよりも、今、はっきりしたのは、自分が愛しているのは、光ではなくて藤堂さんということだ。

結婚するかはわからないと藤堂さんは言うけれど、私は結婚するつもりがなければ一緒に暮らすなんてできない。
だから、返事はそういう覚悟がなければできない…
よく考えさせて欲しいと言おう。
少しの間に、こんなことが頭の中に駆け巡った。

「どうするの?一緒に暮らすの?」

藤堂さんは、伏せていた目を開けて、こちらを痛いほど見つめながらそう言う。

「一緒に暮らすよ」

どうしたんだろう、今さっき考えたこととは違うことを口にしている。

でも、これでいい、そんな思いが心の底から湧き上がってくる。

「そう。じゃあ、そうしましょう」

藤堂さんは、息をフーッと吐いた。

私たちは、冷たくなったミルクティーを飲み終えて、急いで外に出た。

あたりは真っ暗だった。

ただ、時折、手を繋いで歩いている大学生のカップルを見かけた。

藤堂さんの左手が私の右手に触れた。

私は藤堂さんの手をとって、静かに握った。

私たちはそのまま、闇の中を一緒に歩き出した。

光へ、それとも更なる闇へ、どちらに向かって歩み始めたのだろうか、そんなことが頭の中にチラチラした。

けれど、ふと見ると、藤堂さんの瞳はきらめいているように見えた。

もしかしたら、私の瞳も、自分には見えないけれど、そうなのかもしれない。

「自由に向かって」

藤堂さんは立ち止まって、私の耳に口を近づけると、聞こえるか聞こえないぐらいかの声でそう言った。

その言葉が、かすかに光をぼうっと放って、私の胸に降り積もるような、そんな気がした。

あたりは相変わらず、暗いままだった。

それでも、たとえ、あの人たちに私たちは地獄に堕ちていったと言われたとしても、二人でいる地獄は天国よりもあたたかいのかもしれない。