無意識さんとともに

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聖人A 10 狂宴

たっちゃんが『COME HOLY SPIRIT!(聖霊よ、来てください)』と叫んだ後、一瞬の静けさがあった。
その静けさの後、会堂内はどよめきが起こった。

泣き叫ぶ者、体を震わしている者、異言(通常の人間の言葉とは違う天使が語るとされる言葉)を語るもの、中に床で転がるものさえいた。

ぼく自身もイスの上で、体が飛び跳ねていた。

そしてどうやっても止められない。

ちょっと離れたところにいる母を見ると、母は顔を覆って啜り泣いている、そして「主よ、罪深い私をお赦しください、お赦しください、お赦しください」と言っている。

ぼくはイスの上でなおもスーパーボールのように飛び跳ねながら、そんな様子を冷静に見ている自分がおかしかった。

牧師は、たっちゃんの横で、床に倒れ伏してしまっていて、体をぴくぴくさせている。

牧師夫人は、青ざめた顔でその様子を見ている。

もちろん、全く、反応を表さないどころか、激怒している人たちも半分ほどいた。

「もう、たくさんだ。これじゃ、新興宗教と変わらないじゃないか」

「西洋狐憑きだ、こんなところにはいられない」

「こんな教会にしたのは牧師の責任だ」

彼らはもう我慢がならないという表情で、駆け足で教会堂を出て行った。

その中には、教会学校の先生であり、有名な牧師の息子である田中先生もいた。

たっちゃんは講壇の横に立って、彼らが去っていくのを見つめながら、不敵な笑みを浮かべた。
「不信仰なものは去っていくのです。
主は、鞭を作って、両替人の台をひっくり返し、神の宮をおきよめになられるのです。

『父の家を商売人の家としてはならない、祈りの家と呼ばれるべきである』と言われる。

今がそのきよめの時、籾殻は風で吹き飛ばされるのです。

さあ、籾殻よ、吹き飛んでいきなさい、この世の中へ」

会堂に残っている私たちの上に、恐れが広がった。

再び、たっちゃんは声を張り上げた。

「あなたがたは、主によって選ばれたのです。

恐れなくていい、あなたがたは選ばれし王国の民、レムナントなのですから。

むしろ、喜びなさい。

主はあなたがたを自分の子どもとして選び、ご自身の支配の中に入れ、神の軍隊として立たせてくださるのだから。

MORE, HOLY SPIRIT(もっと、聖霊を注いでください)」

まるで、天が開けたようだった。
残っている私たちは、いっせいに誰も彼も異言を語り出し、それから笑い出した(HOLY LAUGHTER、聖なる笑いという現象)。

たっちゃんは、天を見上げ、両手を上に上げ、微笑みながら、言った。
「神の祝宴を楽しみましょう」