無意識さんとともに

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スクリプト小説 催眠!青春!オルタナティヴストーリー

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 222 エピローグ

僕たちが付き合うことを知っても、誰も驚いたものはいなかった。 みんな、神楽坂さんも佐伯さんも藤堂さんも福井君も、同じ図書委員のみんなも、司書の先生や藤堂先生さえも、僕たちが付き合うようになることを密かに願っていたらしい。 受験勉強は大変だっ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 221 別れ

それから、僕たちは和菓子を食べ、冷めかけたお茶を飲んだ。 今までのこと、これからのことを、僕たちは話し続けた。 「ちょっと待っていて、智彦」 僕だけでなく、幸子も僕のことを名前で呼ぶようになっていた。 少し寂しい気もしたが、大人になったことと…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 220 告白

僕も何だかうつらうつらしていた。 そうして、目を開けると、はまっちが目の前に座っていた。 「うえっちも眠っていたの?」 「どうやら、そうみたいだね。何だか喉が渇いた」 「私も。もう3時になっているわ」 確かに、腕時計を見ると3時を過ぎている。何…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 219 退行催眠⑵

「赤い服を着ている女の子が見えます」 「その子はどんなことをしていますか?」 「テーブルの陰に隠れて震えて泣いています」 「今、周りからどんな音が聞こえますか?」 「男の人と女の人の怒鳴り合う声が聞こえます」 「その子は今、体のどこにどんな感じ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 218 退行催眠⑴

お弁当を食べ終わって、お茶を飲むと一息ついた。 「さて、どうしようかな?夜までにはまだまだ長いし」 何時までという予定は立てて来なかったが、はまっちは夜も何か考えているらしい。 「催眠の練習しようか?僕がはまっちにまだしてないから」 「そうね……

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 217 小屋へ

秋津駅から並んで歩いた。 七夕だからと言って特別なことはないのだが、それでも商店街にはちらほらと笹を飾っている店がある。 「この和菓子おいしいのよ」 はまっちは思い出したように、スカートを翻して店の中に入っていく。 僕も一緒に、木製の引き戸を…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 216 プレリュード

7月7日。 僕は、4限目の試験を終えた。 テストの出来はわからないが、今の自分の力は出せた気がする。 そうして、心はすぐさま、僕の身体よりも早く、司書室のはまっちのところに向かっているようだ。 僕は、初夏の日差しがいっぱいに差し込む廊下を通っ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 215 直前

高校3年生の日々は、あっという間に過ぎていく。 気がつくと、もう7月に入っていた。 意識しないようにしようとしても、どうしても意識してしまう、7月7日、織姫と彦星が天の川で出会う、そしてはまっちと僕にも何かしら大きな意味を持つはずのその日が…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 214 福井君への催眠

「福井君、ちょっと催眠をやってみてもいいですか?」 福井君は顎に手をやってしばらく考え込んだ。それから言った。 「いいよ。怜にもやってもらったことはないんだけどね」 「じゃあ、初めてですか?」 「無限塾で呼吸合わせをしたことはあるけどね」 「じ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 213 カカシの神

「ところで、上地君は哲学科を志望していると怜に聞いたけど」 僕は言葉の内容よりも、福井君が怜と言っていることに気を取られた。 「そうですけど…福井君はどこを志望しているんですか?」 「僕も今のところは哲学科…なんだ」 「今のところはというのは?…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 212 福井君との会話

次の日曜日、バス停ではまっちと待ち合わせをして、はまっちと一緒に藤堂さんの家に行った。 「いらっしゃい、さっち、上地君」 藤堂さんには、珍しく、Tシャツとジーンズというラフな格好をしている。 藤堂さんに連れられて、部屋に向かう。 部屋のテーブル…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 211 高校3年生

誕生日が過ぎると、あっという間に、僕もはまっちも高校3年生になった。 さすがに、3年生になると周囲は慌ただしかった。受験まで、あと10ヶ月ともなると浮き足立ってくる。授業中に、授業を聞かないで、英語の参考書を広げているものもかなりいたが、教師…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 210 僕の誕生日5

お品書きと書いてある紙を見て驚く。 前菜3種:サーモンのカルパッチョ、ポークパテ、キャロットラペ スープ:コーンポタージュ パン:ライ麦パン メイン:鶏のコンフィ 飲み物:ミルクティー デザート:柚子のシャーベット 「これって、フレンチのコース⁉︎…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 209 僕の誕生日4

それから、僕が催眠をはまっちにかける番だったが、なんだか脱力してしまって無理そうだった。 「うえっちが私にかけるのは、また今度でいいわ」 「ごめんね」 「ううん。それより、何だかとても眠そうだから、ちょっと眠るといいんじゃない?」 僕は、ちょ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 208 僕の誕生日3(先行催眠)

「あなたが呼吸をするたびに、トランスの中にますます深く入り、 心臓が脈を打つたびに、未来へと時間を早送りすることができるかもしれません。 そうして、時計の針が右向きに回転していって、今は5年後の自分を見ることもあるでしょう。 口を開いて話すこ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 207 僕の誕生日2

「さてと…」 はまっちは、僕の真向かいに座っている。日曜日の早い時間だからか、何の音もしない。 「うん?」 「お昼までは、まだ時間があるわね」 「そうだね」 「じゃあ、催眠の練習でもしましょうか?」 「催眠?」 僕は自分でもびっくりするぐらい素っ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 206 僕の誕生日1

それから、僕たちは、今度は中華街に行って、お店を回り、3時になって小腹が空いて食べ歩きをした。 定番の大きな肉まんを買い、ふたりで分け合って食べた。 そうして、僕たちは帰途につき、秋津駅で別れた。 「じゃあ、また、明日。今度はうえっちの誕生日…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 205 はまっちの誕生日当日5

それから、僕とはまっちは山下公園、赤レンガ倉庫を巡った。 そして、また、動く歩道に乗り、降りたところで右に折れた。 そこには、みなとみらいのシンボルだったコスモクロック、大観覧車がある。 「神奈川に住んでいたけど、コスモクロックに一度も乗った…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 204 はまっちの誕生日当日4

僕たちは狭い階段を上って2階に行った。 木の梁と柱が張り巡らされ、歴史を感じさせる空間。 ふたりで窓際の席に座る。 「こうしていると、私たち、ほんとにタイムトラベラーみたいね」 「そうだね、この席にどれだけの人が、昔から座って、古き良き洋食を食…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 203 はまっちの誕生日当日3

僕とはまっちは、みなとみらいで降りる。 ランドマークタワーの中の店をウィンドーショッピングしていく。 「なんだか、本当に未来の都市みたいだね」 「そうね。とても非日常的な感じで、うえっちと私で時間のはざまを漂うタイムトラベラー見たいね」 はま…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 202 はまっちの誕生日当日2

西武新宿駅の改札口を出ると、右に折れて、ガード下をくぐる。 横断歩道を渡り、J R新宿駅に向かう。 土曜日とはいえ、かなりの人混みだ。 いきおい、僕たちは距離を詰めてくっついて歩かざるを得ない。 「そろそろ、どこに行くのか教えてくれるのかな?」 …

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 201 はまっちの誕生日当日1

1月30日当日8時40分、東村山駅の改札口に行ってみると、もうはまっちが待っていた。 ブルージーンズにライトブラウンのPコートを羽織っている。 いつの間にか、セミロングよりちょっと長くなった髪をポニーテールにしている。 僕を見ると、笑顔で手を振る。…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 200 誕生日に

僕とはまっちの誕生日がやってくる。 この誕生日に、早生まれの僕たちは、ようやく17歳になる。 そう思うと、何だか特別な日であるような気がしてならなくて、でも、今のはまっちとの距離感がちょうどよくて、一体、何を贈ったらいいのか全くわからない。 自…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 199 願い

正月が明けたが、僕は同じような日々を過ごしていた。 学校が始まると、学校の図書館ではまっちと顔を合わせた。 僕たちは、放課後、司書室で何気ない会話をする。 「最近はどうしてる?」 クリスマスからそんなに経ってないのに、はまっちは『最近』という…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 198 大晦日

それからの僕の生活は、過去の僕からしたら信じられないぐらい、退屈なくらいに平穏なものだった。 冬休み、同級生たちは、高2ともなれば、大学受験のために冬期講習に行く。 けれど、僕にはそんな経済的な余裕はない。 もちろん、無限塾でのチューターのバ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 197 凪

そうして、楽しいパーティーもお開きになった。 片付け物と洗い物は、僕と福井君がやることになった。 食器をふたりでキッチンのシンクに運ぶ。 シンクはよく磨き込まれているのかビカビカだ。 洗剤をスポンジにつけて十分泡立ててから洗っていく。 洗剤の爽…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 196 交換プレゼント

「その前に、サッチが作ってくれたケーキをみんなでいただこうかしら」 「そうね」 「じゃあ、切り分けてくれる、サッチ?」 「はい」 はまっちが、赤い苺がのった真っ白なケーキを真っ白なお皿に切り分けていく。 藤堂さんは紅茶をポットから注いでいく。 …

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 195 お願い

そうか、あのことが起きる前だったか、はまっちと僕とはまっちの友達と高村君で休み時間にUNOをして遊んだこともあった。 僕の記憶の中では、小学生時代は、はまっちのこと以外は黒く塗りつぶされていたけれども、楽しい思い出もあったんだ。 そう思うと、次…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 194 夢のクリスマス

「そうなんですね」 僕は、どう返していいかわからなかったので、適当な言葉を発し、適当なあいづちを打つしかなかった。 「僕は、もう神父になろうという望みは…いや、強制かな、捨てました。そして、カトリックであることもやめました。親の支配、宗教の支…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 193 福井君との再会

藤堂さんと、福井君が一緒に、部屋に入ってきた。 福井君は、もう忍者のような格好ではなかった。派手ではないけれど、普通の格好をしている。何だか、発する雰囲気も以前と比べると、柔らかい感じがするのは気のせいだろうか? テーブルを挟んで、僕の隣に…