無意識さんとともに

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光の人〜H神父⑵

翌週、私は神父の教会に出かけた。

Tセンター駅で降りて、並木道を歩いていくと、◯◯カトリック教会がある。

まだミサが始まる前だというのに、教会堂はいっぱいで、後ろにはスチールの折りたたみ椅子が並べられていた。私はそのひとつに腰掛けた。

神父の話は、ものすごくシンプルでわかりやすく、そこにいる聴衆に合わせて語られているように感じた。そうして、「すべての人はもう例外なくすでに救われていて、信仰とは一足先にそのことに気づくだけのことだ」という内容だった。衝撃的で、中世だったら異端審問にかけられて火炙りにされてもおかしくないかもしれない。ただ、私にはただただ本当のことだとしか思われなかった。

ミサの後、思い切って、話を聞いてもらおうと神父の前で列をつくっている人に加わった。『どうしてもお礼が言いたい』とそう思った。そして、できるならこれからこの教会に通って神父のそばにいて神父のファンとして人生を終えたいとさえ思っていた。

私の番がやってきて、私が自分のことを話すと、神父は言った。

「ええ、覚えていますよ」

そして、私が神父が命の恩人であること、もうこの教会に通って、神父と共にいたいというような希望を述べると、

「私がしたんじゃなく、神様がしたんですよ。あなたは私に縛られるのではなく、ただただ自由にしていてください」

私は驚愕した、なぜなら、今までほとんどの牧師や神父は何かの世話になると、彼らの教会に来るように勧め、いわば彼らの身内になるように囲い込んできたから。

見上げると、空は目に染みるように青く、爽やかな風が吹いていた。