2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧
僕がトロントを発って、日本に帰る日は迫っていた。 大橋さんは興奮気味に僕に言った。 「これはすごいことだよ、アンに祈ってもらうこともごく稀な貴重なことなのに、佐藤君に与えられた預言はね。もしかしたら、君には、本当に聖人への道が与えられている…
佐伯さんと肩を並べて歩く。中学校が目に入ってくる。 「懐かしいな」 「そうだね」 「あの頃が1番だった」 「1番何だったの?」 「1番楽しかった」 「そっか、ジェットコースターみたいだったけど」 「そう、ジェットコースターみたいだった」 「高校は…
僕は、昔、たっちゃんに皆の前で自分の性的な罪を暴かれたことを思い出した。そうして、身体がガタガタと震えてきて、冷や汗が背中を伝わって流れる。 ”You have been chosen as vessel of Holy Spirit." ただでさえ慣れない英語が、もう混乱して耳に入らな…
神楽坂さんの家に行くのは、数年ぶり、2回目だろうか。 けれど、最初に行った時と変わらず、緊張する。いや、あの時よりも緊張しているのかもしれない。 もう自分が卒業してしまった中学校の近くの踏切を渡り、住宅街を入ると、神楽坂さんの家があった。 チ…
人間は、物語なしには生きられない。 そして、人間は、物語を通して、世界を、人間を、自分自身を見る。 物語というのは、外から与えられる物語もあれば、自分で創り出す物語もある。 ブッダやイエスが語ったのは、新たに創り出された解放の物語だったが、弟…
僕が午前1時に行くと、さすがに普段よりも人は少なかったが、それでも500人ぐらいの人はいた。 入り口を入ったところの右側の売店前で、大橋夫妻と待ち合わせていた。 「こんな時間に集まる人は、本当に熱心な人だけだろうね。何でも、執りなし手の女性は世…
さて、イエスセットを使った催眠を練習すると言っても、僕には先立つものがない。と言ってもお金のことではなく、練習相手になってくれそうな友達のことだが。 こういういざという時、頭にパッと浮かぶのは、神楽坂さんだ。 僕は、電話してみた。女の人に電…
僕は大橋夫妻と親しくなった。 お金がなかったから、僕はカロリーメイトを食べるか、教会でやたら大盛りのトマトソースのマカロニを食べていたのを、気の毒がって、大橋夫妻は僕に世界で1番おいしいと看板に歌っているポークリブを奢ってくれた。僕は、それ…
心に聞くようになってしばらく経った頃、心の答えが何だかそっけない答えに思えたこともあった。 例えば、 「心よ、どうしたらいい?」 「私に頼らないで、自分で決めたら」 どういうことってその時はそう思って、ちょっと心にむかついてむくれたのだが、後…
「イエスセットを少し変えるね。今までも相手がイエスと言ってくれそうなものを口に出したんだけど、今度は、相手にとってどう考えても当然のこと、自明の理を3つ並べ、最後には今まで通り、催眠を喚起する言葉を付け加える」 「自明の理、初めて聞きました…
僕は家に帰ると、イエスセットを母に試してみる。なるべく、母と話したくないと思っている僕には、これは勇気がいることだった。 心に一応、聞いてみる。 『心よ、母にイエスセット使ってみて大丈夫かな?』 『大丈夫だよ、レッツトライ!』 心は親友だとい…
さて、支配者の支配と邪魔が減ってきて、心にもある程度、聞けるようになって、調子良く毎日を送っていたはずなのに、急に落ち込みを経験することがある。 そんな時、とっさに心に聞ければいいのだが、落ち込みがあまりにひどいと心に聞く気にもなれない、あ…
前の方の席に座ることは諦めて、僕は一番後ろの方の席に座る。 『聖霊が本当に神様なら、位置が前とか後ろとか関係ないはずだろう』 そう思ってみるものの、何だか残念なような気がしてならなかった。 『明日の朝の集会は、始まる1時間前には来なきゃ』 「…
「心に聞く」ことを始めていった時、言葉ではなくイメージに頼りがちになるということが起こることがある。実は、ラカンという人は「無意識は言葉でできている」と言っている。 これは1に書く内容かもしれないが、例えば、こんな感じである。 「心よ、〇〇…
「もうひとつ?」 「そう、もうひとつの謝礼。つまり、催眠を教えるということ」 「まだ、あるんですね」 「そうだよ、まだあるよ、いっぱい」 藤堂先生は髪をかきあげながら、言った。 「今度は何でしょうか?」 「催眠の初歩にもなり、催眠的コミュニケー…
「さて、この前は、エリクソニアン催眠(現代催眠)は、催眠術と違って、術者がかけられる人に一方的にかけるものではなく、むしろ、かけられる人に主導権があるということを言いました」 「そうですね、だいぶ驚きました」 「その時、水泳に例えました。か…
それから、後、何とも表現するのは難しいけれど、母は母親という名の他人になった。生物学的には未だ母親だけれども、精神的には他人。 言い換えれば、『どうしてわかってくれないんだよ』という気持ちが消えた。 わかってくれないのが当たり前で、わかって…
”COME, HOLY SPIRIT!”(聖霊よ、来てください) ヒッピー風のその人は言うと、僕は上から何か力が降ってくるのを感じて、立ったままジャンピングし出した。 そして、そのまま、床に倒れ込んだ。 そうすると、彼はさらに、倒れている僕の上方に手をかざして言…
僕は、怒りというのはとても悪いものだと思っていた。 小さな頃から、僕が怒りを表すと、しつけだと言って押し入れや物置に後ろ手をさせられて投げ込まれたり、「馬鹿、気狂い」と言って罵られた。 だから、なるべく、怒らないように、怒っても怒りを表さな…
初心者講座で書いたことを深掘りしてみる。 吉本先生の言葉に、「この世はすべて催眠」「催眠によって催眠を解く」がある。 すると、催眠はある意味、至るところにあり、また、催眠は2種類あるということになる。 それを、私は、意識的催眠と無意識的催眠と…
「前回、お約束したことを話していきましょうか」 「待ちくたびれちゃいましたよ」 「そうですか。えーと、催眠術とエリクソニアン催眠は違います。 よくテレビとかで見かける催眠術は、ショーのようなもので、人の心を癒したり、能力やリソースを見出すもの…
空港に着くと、僕はカールトンプレイスという教会近くのホテルに行くために、タクシーに乗った。 頭にターバンを巻いた大柄のドライバーだった。 僕が場所を告げると、急に、豪快とも不気味ともどちらにも取れるような大声で笑い出したので、僕はどこか変な…
高校が始まった。 自転車で10分で通える距離だった。それで、僕はほぼ毎日、放課後、無限塾にやってきて、自習室の教卓のところに座り、小学生や中学生の質問に答える。 小学生や中学生の質問に答えるには、僕も勉強しなければならない。 『1を教えるために…
支配者はどこにもいるが、特に宗教団体、また心理学や催眠を学ぶところでは遭遇する確率が上がるらしい。 というのは、支配者の関心は、常に、どうやったらより上手く人を支配することができるかということだからである。 そのために、支配者は心理学や催眠…
初心者講座に書こうと思ったが、初心者講座に書くには複雑すぎるので、別に書いておくことにする。 どうも、催眠には2種類あるようだ。 催眠術と催眠、伝統的な催眠と現代催眠の区別を言っているのではない。 そういう分類ではなく、意識的な催眠と無意識的…
「ところで、無意識さんは、無・意識で、意識で捉えられないものなら、どうやって無意識にアクセスしたらいいんですか?」 「カナメのことを聞いてきますね」 「できれば、早く楽になりたいもので」 「そうですよね、ひとつはトランス(無意識状態)に入るこ…
ここから、ようやく、「心に聞く」ことができるようになる。 もしかしたら、ここに来るまで1年以上かかることもあるかもしれない。 けれど、ここに来るまでが大切なのだ。心に支配と邪魔を排除してもらうことが何より大切である。 そうして、いろいろな声か…
裸で全ての人の罪を負い、嘲られ、罵られ、十字架に付けられたイエス、そのお方に僕は引きつけられ、そのお方のようになりたいと願った。 というか、僕は松沢さんから逃げ出した時点で、僕はもうこの世に居場所がない、そんな気がしていた。 僕に、残された…
『母親が支配者ってどういうこと?』 確かに、食事が3食あったことはまともにないし、小さな頃は押入れや物置に閉じ込められたり、叩かれたり、怒鳴られたりしたことはある。 けれど、支配者と言えるほど、悪い人なんだろうか? 信じたくない気持ちがあった…
「すみません、この前、白い花を赤いサングラスで見たら赤く見え、青いサングラスで見たら青く見えると言っていましたが、そうするとサングラスを取ったら、白い花そのままに見えるということになりますよね」 「いいことに気づきましたね。そこはスルーした…