無意識さんとともに

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2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 11

はまっちは全部言わないでも、全部わかってくれてる気がした。そんなことはあり得ないのだが、後から考えれば錯覚だったかもしれないのだが、ぼくはそこにすがってしまった。 でも、そうしてすがりついたはまっちが自分と同じく傷ついた人間であることに、な…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 10

ぼくは、ただ長いこと黙っていた。 「大変だね」とか「つらいね」とか言う言葉が心をよぎったが、そんな言葉ははまっちを侮辱する言葉のような気がした。 沈黙を破るようにして、はまっちが言った。 「じゃあ、次はうえっちの番だよ」 「…」 「同じにおいが…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 9

「ある時、あるところに、幸せなカップルがいたの。 男の人は、すごくイケメンで才能もあってお金をたくさん儲けていたわ。けれども、そんな外面とは違って、心の中はすごく寂しかった。 ところが、ある日、駅への道を急いでいる時に、女の人にぶつかってし…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 8

ぼくたちはしばらくただ黙っていた。 それから、ぼくはバッグから赤い小さな箱を取り出してテーブルの上に置いた。 「ウノ!」 「うん、やる?」 「やるよ」 … ぼくはぎこちない手つきでカードを混ぜた。高村君みたいにかっこよくカードをシャッフルできたら…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 7

正門をくぐると、消毒液のにおいがした。ぼくたちは見つからないように、右脇の小道から森の中へ入っていった。夏なのに、何だかひんやりとした感じがする、ほんとに温度が低いのか気持ちの問題なのかわからなかったが。 いつも、カブトムシやクワガタを取る…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 6

実際のところ、はまっちを秘密基地に誘うというチャンスはなかなかやってこなかった。 他の女の子たちに囲まれて、笑ったり冗談を言ったりしている姿を見ていると、あの時、図書室で見て一緒に帰った女の子は別人ではなかったのだろうかという気がした。さら…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 5

『秘密基地に行こうなんて、どうして言っちゃったんだろう』 秘密基地は、小学校から10分ぐらい歩いたバス通りに面した大きな国立病院の中にあった。 この病院は、広大な敷地が森で囲まれており、ぼくたちは朝、自転車でよく虫を取りに行った。一面に生えて…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 4

『なぜ、浜崎さんは一緒に帰ろうなんて言い出したんだろう』、考えてもわからないそんなことをぐるぐると考えながら、3階から2階、2階から1階への階段を降り、玄関にやってきた。その間、浜崎さんは何も言わなかった。 名前が書いてある下駄箱を前にして、ぼ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 3

不思議なもので、心にもやっとしたものをカタチにしてしまうと、とたんにカタチは生命を持って動き出す。 高村同盟のノートに、浜崎幸子と書いたことで、まるで自己暗示のように、『浜崎さんが好きなんだ』という思いの雫が心の水面に滴り落ちて、次から次へ…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 2

小5で代わった担任の先生は、乙姫先生という変わった姓の中年の女性の先生だった。短髪の声も低めで男っぽいサバサバした感じだった、どう考えても乙姫という名前は似合わない、それで、男子は、「おとこの」先生と呼んでいた。 先生の授業は面白かった、面…

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 1

引越しの時も、ぼくは憂鬱だった。なんと言っても、住み慣れた町を捨てて知らないところに行くのだから。と言っても、生まれた時から住んでいたというわけではなく、3回目の引っ越しだったけれど。 小学校では、ぼくのような者でも友達がいた。というか、ぼ…

母の呪い

「あなたは何歳になっても私の子どもなの。お母さんはいつもあなたのことを思って、いつもあなたのために祈っているわ。あなたを愛しているわ」 これを読んでどう思ったでしょうか? 『ああ、何ていいお母さん。私もこんなお母さんが欲しかったなあ」とか思…

母親破壊という呪文

気のせいか、日本人には反抗期がなかった人が多い気がする。 本人はちゃんと反抗期があったつもりでも、よくよく聞いてみると、反抗ではなくて、『何でわかってくれないんだ、わかってくれないの』という共依存的なものであって、親、特に母親と自分を切り離…

AとBとC 第三十二回〜空の下で

C2 その後、私は、ただプラトンアカデミアの面々と共に、楽しい、ふざけた日々を過ごしていた。以前だったら、そういう馬鹿騒ぎのような日々に後ろめたい気持ちになったろうが、今は青春の1ページとして楽しんでいた。 そして、そういう日々も瞬く間に過ぎ去…

AとBとC 第三十一回〜奴隷解放

C2 教会に行かなくなって、次第に私はクリスチャンとしての振る舞いもやめていった。食事の前のお祈りもしなくなったし、前は必ず断っていた哲学科のクラスの飲み会にも行ってみた。 そして、教会で自分の友人だと思っていた人たちとの仲も疎遠になっていた…

AとBとC 第三十回〜脱出

B2C 相変わらず、教会には通い続けてはいた。自分にとっては習慣みたいなものだった。そして、また、依然としてクリスチャンとして振る舞い続けていた。食事前には他の人の前でもお祈りをしていたし、大学のクラスの飲み会には参加しなかった。 それでも、自…

AとBとC 第二十九回〜心に聞く2

C1 それからも、心に聞いては邪魔を排除することを毎日繰り返していた。 変化は些細なことから表れてきた。 以前は、物を買うことも母の目を意識していた。実際、母は私の買ったものをチェックして、ああだこうだとダメ出しをする。 だから、買おうとする時…

AとBとC 第二十八回〜心に聞く1

A B C1 『心に聞く』?、気乗りはしなかったが、このぐるぐるから抜け出せるキッカケぐらいは与えてもらえるかもしれないと思ってやってみることにした。 「じゃあ、同じ言葉を繰り返してくれるかな。『心よ、私とあなたの間に邪魔はありますか?』」 いきな…

AとBとC 第二十七回〜初老の男2

A B C1 『自分はなぜクリスチャンであることを恥じているのだろうか…そうか』 そう思った途端、今度は右手の小指が痛み出した。 「顔をしかめているね。あの小指が痛むのかい」 「なんでそんなことがわかるんだ?」 「君のことなら大体わかる」 どうしてと言…

AとBとC 第二十六回〜初老の男1

BC1 夢の中で目が覚めた。 私は、机の上から顔をあげて、あたりを見回した。目の前にはふすま、左手には大きな窓があって林が見えている、後ろには本が散乱している。 まったく変わらない光景…だからそれだけ見れば、単に目が覚めたそれだけのことだったろう…

AとBとC 第二十五回〜夢想2

A B C1 キルケゴールは、自分が神に呪われていると信じていた。そうして、33歳、つまりイエス・キリストが亡くなった歳までに自分が亡くなると信じていたのだ。事実、彼の兄弟はその通り、何人も33歳までに亡くなっていた。 彼は父からある事実を聞かせられ…

AとBとC 第二十四回〜夢想1

ABC1 そうやって、私は大学に通い、プラトンアカデミアの面々と時間を過ごし、また日曜日には教会に通っていた。 心の内には絶えず大きな矛盾があり、時限爆弾を抱えているようだったが、大学でも教会でも楽しいことがなかったわけではない。 いろいろな楽し…