無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 208 僕の誕生日3(先行催眠)

「あなたが呼吸をするたびに、トランスの中にますます深く入り、

心臓が脈を打つたびに、未来へと時間を早送りすることができるかもしれません。

そうして、時計の針が右向きに回転していって、今は5年後の自分を見ることもあるでしょう。

口を開いて話すこともできます。

うえっち、5年後の自分はどんな状況ですか?」

僕の心のどこかしらか、5年後の自分が浮かんで来た。

「…書斎で革張りの椅子に座って、パソコンのキーボードを打って、何かを書いているようです」

「5年後の自分はどんな姿や表情をしていますか?」

「薄青のオックスフォードシャツに、黒いジーンズを身につけて、とてもリラックスしています。顔を見ると、何だか自信に溢れているように見えます」

「どんな音が聞こえますか?」

「パソコンのキーボードを叩くリズミカルな音、外からチチチと鳴く鳥の声が聞こえます」

「体のどこかに感じている感触はあるでしょうか?」

「みぞおちのところに、静かにふつふつと湧き上がるものを感じています」

「5年後のあなたのところに行って、声をかけることはできますか?」

「はい」

「声をかけて、何をしているのか聞いてみてください。わかったら、私に教えてください」

「はい」

僕は、5年後の僕に挨拶して、何をしているのか教えてもらった。

「今、ある文学賞のために小説を書いていると言っています」

「小説を書くことは、5年後の自分にとってどういう意味があるか、聞いてみてください」

僕は、彼に聞いてみた。小説を書いている時は真剣な顔だったが、話す時はとても親しみやすい、22歳の若者らしい感じだ。

「小説の執筆は、自分にとっては何よりも楽しい、生きることそのものだと言っています。そう言いながら、微笑んでいます」

「どんな小説を書いているのか、聞くことはできるでしょうか?」

僕は聞いてみた。彼は、話す前に、机の上に置いてある磁器の茶碗のお茶を一口、口にした。

「自分と妻の出会いと、成長を小説に書いていると言っています」

「そっ、そうですか」

「5年後の自分から、今の自分に言いたいことがあるか、尋ねてみてください」

彼は、小さくもなく大きくもない声で、僕に言葉を与えてくれた。

「毎日、無意識に聞いて、ひとつずつピースを当てはめていけば、今はわからなくても、やがてそれは君の心を表す一枚の絵になっていくだろう、と言っています」

「それでは、別れを5年後の自分に告げることができますか?」

僕は、彼に別れを告げた。

『君は、いつでも僕に会いに来るといい。僕も君に物語の中で会っているのだから。今、目の前にいる人との関係を大切に、急ぐことなく、色とりどりの糸を紡ぐといいかもしれない』

「それでは、覚醒状態に戻ってきまーす」

ひとーつ、ふたーつ、みっつで、僕は目を覚ました。

彼の最後の言葉を、はまっちに言おうと一瞬、思ったが、僕は黙っていた。