ミルトン・エリクソンの動画や本を読んでいるが、とても興味を惹かれる。
私は、エリクソンに治せない患者なんかいないものだと思っていた。
ところが、よくよく読んでみると、エリクソンが治療を断ったというケースもある。
今まで読んだところでは、3つある。
1つめは、プロの患者。
プロの患者とは何かというと、今までありとあらゆる種類の心理療法を試してきて、それらのダメな点を自分は熟知しているということに自負を持っており、エリクソンのところにやってきたが、『治せるものなら治せ』という態度でいる患者。
こういう患者に対して、エリクソンは実に辛辣な言葉で対処している。
そういう人は、本当は良くなりたいのではなく、ただエリクソンを試すためにやってきたものらしい。
2つめは、単純に治るのが難しい患者。
自分の手に余ると判断した時は、エリクソンは断っている。
3つめは、エリクソン自身が嫌いな患者。
ヘロイン中毒の患者が、エリクソンの治療を受けて良くなったが、その後もその患者はエリクソンの診察を続けて受けたがったが、エリクソンは彼を嫌いという理由で断ったということだ。
こう見てみると、実におもしろい。
エリクソンは、決して、何でも癒せる、万能感に満ちた神にはならなかったし、なろうともしなかったことがわかる。
また、自分軸をしっかり持っていたことも窺い知れる。
エリクソンとは、「砂漠の魔術師」と言われることもあるが、むしろ、ある人が言った「生の達人」という方がふさわしいと思う。