無意識さんとともに

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催眠の現象学65 地殻変動⑴〜怒りのふたを外す

「怒ってるでしょ?」

「怒ってないよ!」
こんなやりとりを身近な人として、ついには本当に怒ってしまうんです。
そんなことがあったような気がします。

もう自分には怒りなんてないと思っていました。

確かに、ネグレクト家庭に育って、小さな頃から怒りを溜めていました。

だから、いつも、自分の中に、今すぐにでも噴火しそうな火山を感じていました。

そうして、時折、それが爆発することもあったのです。

けれど、数年前に、FAPを受けて、トラウマと共に、そんな火山は自分の中から消失してしまいました。

少なくとも、もう、自分の意識上は、自分の中に怒りを感じることはなかったのです。

ところが、親しい友達に、「私ってどんな人?」って尋ねたところ、

「純粋だけど、時々、内側に怒りを感じる」(この言葉は記憶によるもので、正確かは分かりません)と言われたんです。
私は、友達を尊敬していたので、そんなこともあるのかなと思いました。

私の母は、父に浮気されたことがあって、私と妹に、男はどれだけ汚く醜いものなのか、性的なものはどんなに穢らわしいものなのか、小さな頃から吹き込みました。

その甲斐あってかどうなのか、私は、自分が男性なのに男性恐怖になり、それだけでなく、自分も男性ですから、自分が男性であることを呪いました。また、性的なものには、それがわずかであっても、吐き気を感じるようになっていったのです。

ところで、母は、根っからのお嬢様育ちで、自分がお姫様扱いされて当然で、そうでなければものすごく怒るのです。
自分が世界一美人で、世界一善良であると信じていました。

それは妹も同じでした。

そうして、父はそんな母と妹に、絶えず、評価され採点され、『足りない、足りない、まだたりない』と言われていました。

父は、反論することもなく、ただ、それらの言葉を黙って聞いているだけでした。

しかし、私も対岸の火事では済まされなかったのです。

私も、母と妹をお姫様扱いするように、育てられました。
そうして、自分が男性であることは去勢され、男性を憎むように吹き込まれ、女性に対しては、いわば、『宦官』(中国の宮廷で、皇帝のお妃たちと姫に仕える役人)あるいは執事として仕えるように支配されたのです。

もちろん、反抗はしたのですが、気づけば、いつの間にか、良き『宦官』になろうとしていたことは間違いありません。
例えば、私がキリスト教に入信して、聖人のようになろうとしたことも、良き『宦官』から、さらにもっと、一切の性的なもの、男性性を持たない、天使のような存在になろうとしたという意味なのでしょう。

だから、私は、男性に対しては気持ち悪さを感じ、女性に対しては『宦官』のように下の位置に立って自己犠牲に励み仕えるということをせざるを得なかったのです。

ところが、それに安住することもできはしませんでした。

あれほど、性的なものを忌み嫌う母が、時折、性的なことを口にすることがあったからです。

私は男性に対して性的なものに関して気持ち悪さを感じていたのですが、母、ひいては女性に対してもそういう気持ち悪さを感じるようになっていったのです。

ますます、私は自分の中の性的なものにも嫌悪感を向け、もはや、体というものを持たない天使になろうとする以外はどうしようもなかったのです。

けれど、そうすればそうするほど、性的なものは膨れ上がり、性的なものこそ悪魔のようなモンスターだと思うようになったのです。

(続く)