私たちは、カラオケでの礼拝後に二人で決まってランチを食べたあのファミレス、チェーンでもないマイナーなファミレスで待ち合わせた。
今も、そこに店が存在しているかどうかもわからなかった。
けれども、私たちが再会するとしたら、その店以外には考えられなかった。
もう20時を過ぎていた。
改札口を出ると、酔っ払って何かを口走っている学生が数人いた。
そうだ、ここは学生街なのだ。
私はそんなことを思って、エレベーターに乗る。
エレベーターを降りると、すぐ右手に、私と藤堂さんが礼拝をしたカラオケの入った書店が見えるはずだ。
ところが、そこには、書店は跡形もなくなくなっていた。
代わりに、チェーン店の薬局になっていた。
その上の階にカラオケがあって、ビルの外に看板があったはずだが、それもないようだ。
私は何だか不安に駆られて、急いで歩を進めた。
駅から続く、まっすぐな通りの右側を歩いていく。
そうして、しばらくすると、黄色い看板にシェフの絵を描いた看板のあの店があった。
よかった、今もあった…
チャリンと扉をくぐっていく。
あたりを見回すと、私たちがよく座っていた窓際の席に女性がいて、手を振ってくる。
その顔を見ただけで、何だか胸から熱いものが込み上げて止まらなくなりそうだ。
どうして、もっと早く連絡しなかったんだろう。
そんなことを思いながら、彼女と向かい合わせに座る。
「久しぶりだね」
彼女の声は、私が記憶しているよりもずっと深みのある声に聞こえた。
「そうだね、久しぶり」
そう言って、私はコホンと咳をする。
「もういいの?」
まっすぐな目で私の目を覗く。
彼女の顔をよく見ると、確かに数年経ったことが感じられる。私が知るよりも大人びた顔だ。
「ほとんど、もう、いいよ」
それから、私たちはドリンクバーのところに行って、それぞれ飲み物を持って戻った。
「同じ飲み物ね」
そう言って藤堂さんは笑いかける。
気づけば、私も同じアイスミルクティーを持ってきていた。なぜにすぐに気づかなかったんだろう。
「そうだね」
私も自分の顔が心なしか緩むのを感じる。
そうして、ストローに唇をつけて、甘くないミルクティーを一口飲む。
彼女も同じ動作をしている。
窓の外では、時折、車が通り、店内には私たち以外の客はいない。
「電話で聞いたけど…」
「ああ」
ちょっと心がびくつくのを感じた。
「私も同じ」
「同じって?」
驚いて、思ったより大きな声が出てしまう。
「私も…もう…何も…信じていないの」