赤ちゃんはいないいないバアーで笑う。
あれは緊張と弛緩の繰り返しで、笑い出すそうだ。
小さな頃は、ギッタンバッコンギッタンバッコン、シーソーが好きだった。
友達と向かい合って、上に昇って下に降りて、その繰り返しだけなのに、シーソーに乗りながら、転げる勢いでお腹の底から笑いあっていた。
大人になって、内省して、自分の破壊欲動と性欲動に気がついて。
気がつくと、またひとつまたひとつ、自分を守ってくれた破壊欲動と性欲動に感謝してお別れして。
でもこれって無限タマネギの皮むきじゃない?
むいてもむいても、新たな破壊欲動と性欲動が出てくる。
『キリないなあ、自分ってダメじゃん。』
絶望しかけたその時に、
見えてくるのは、
顔をおおう手、開く手、
聞こえてくるのは、
ギッタンバッコンギッタンバッコンという音。
ああ、人間だもの、
影があるのは当たり前、
でも、影ができるのは光がさしてるからじゃない?
上に昇って下に降りて、
みんなの顔が見えて、みんなの顔が見えなくなって、
ギッタンバッコンギッタンバッコン、
自分のからだと心に振動を感じて…
下に降りて上に昇って、
見える景色が茶色の大地と真っ青な空と、
どっくんどっくん、
心臓から細胞ひとつひとつに、細胞ひとつひとつから心臓に、
血液が流れるのを感じて…
上に昇って下に降りて、
膨れ上がる希望と沈み込む失望、
吸う息と吐く息の音、
心に昇る太陽と心に沈む太陽を感じて…