A 2
誕生日が来る度に、言い知れない痛みを感じたものだった。そんな日はなくなってしまえばよいとまで思っていた。
両親に誕生日を祝ってもらった記憶がない。
「今日は僕の誕生日だけど。」
「だから何?」
急に母はキレる。
「これで何でも気の済むように買ってくればいいでしょ!」
母がお金を床に投げつける。
僕は悲しくなって家を出た。『ただ、おめでとうと言って欲しかったのに、どうして?』。
家から離れた、しかし、家が遠くに見える丘に上って、家の方をじっと見つめる。そのうち、母や父が出てきて探してくれるのを待ちながら。
だが、一向に家から人が出てくる気配はない。僕は打とうとして夢を見る。
夢の中では、父と母がおろおろと心配そうに探しに出てきて、遠くに僕を見つけ、駆け寄って来る。
「Aちゃん、ごめんね。お母さんが悪かった。」
「いいんだよ。」
「そうだ、誕生日をやり直そう。お父さんとみんなで、ご飯を食べに行こうか。」
風が冷たくて目を覚ます。あたりはもう真っ暗になっている。
家の方に目をやると、家には明かりがついている。
僕は何もかも諦めて、トボトボと家に帰る。
母親は、鬼のような形相で、しかも無視する。
そのうち、しかし、それでは済まず、何かが切れたように、怒鳴る。
「この気違い!」
そして、荷造りに使う紐で両手両足縛られて、押し入れに放り込まれる。
押入れの中で、僕はまだあのアンデルセンのマッチ売りの少女の方が僕よりも幸せだったのではないかなどと考える…
私は誕生日がなくなってしまえばいいと思いながら、もし本当に心から自分の誕生日を祝ってくれる人がいたら、何もかも果ては命さえもあげてしまいたいような思いに駆られていたのだった。