無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 29 トンネルの向こう

それから、ずっと日曜日が来るまで、私は部屋の外に行くことができなかった。ただ、閉じこもって、電気をつけることもしなかった。

闇の中で蠢く虫のように、光が怖かった。

もし、外に出たら、誰にも彼にも「裏切り者」と言われるような気がしてならなかった。

もちろん、この状態は光にも伝えることはできない。

光のメールには、一言、『ちょっと、自分を神様の前で省みたいからしばらくメールも電話もできない』と書いた。

そう書いたのに、しばらくすると、お構いなしに、光からメールがやってきて、返事をしないでいると、今度は電話もやってきたが、私は本当のことを言ってしまいそうで、すべて無視した。

来る日も来る日も、ただただ、布団に横になっていた。時折、『神様』ともはや祈りかどうかもわからないような祈りを口にしたが、相変わらず、何の返事もない。

そうして、何も食べなかったが、ついに金曜日になって、何だか無性にお腹が空いてきた。

『こんな状態でも、お腹が空くんだな』と、私は自分の体というものを不思議に思った。

ふらふらと冷蔵庫まで行き、中に入っていたとっくに消費期限が切れている魚肉ソーセージを剥いて齧り始めた。

一口飲み下した時に、頭にさっと閃いた。

『もしかしたら、もしかしたら、あのヨシコ先生なら、わかってくれるかもしれない』

そう思うと、真っ暗な、どこまで続くかわからないトンネルのはるか先の方に、かすかな光が見えるような気がした。

そんな考えが浮かぶと、私はもう居ても立っても居られず、何度も躊躇いながら、番号を押しては途中でやめながら、ついに、オアシスクリスチャンフェローシップに電話をかけた。

「もしもし、こちらはオアシスクリスチャンフェローシップです」

ヨシコ先生の声だ。

「こんにちは」

自分の声がかすれ、震えているのを感じながらも、何とか声を出した。

「智昭さん、こんにちは」

あそこの教会では、お互いをファーストネームで呼ぶ。

「あのう、話を聞いてもらいたいのですが?」

「主人なら、今、出かけているんですが」

「いいえ、牧師先生ではなく、ヨシコ先生に」

「ええっ、私に?」

ヨシコ先生は幾分、戸惑っているように聞こえた。

「そうです、できれば、お会いして話を聞いてもらいたいんです」

自分がいつの間にか、普通に話していることに自分で驚く。

「…そうですか…それなら、日曜日に。ただ、今度の日曜日は総会があるので、その後になりますが、いいですか?」

「はい」

私は電話を切った。私は急に呼吸ができるようになったような気がして、2、3回、深呼吸をしていた。