私は、それから数回続けて、オアシスクリチャンフェローシップに通った。
教会のドアを開けて中に入り、そこにいる人たちの微笑みに迎えられると、脱力して本当にホッとする感じだった。
そのせいなのかどうなのか、あれほど割れるような痛みも幾分、おさまりかけているようだった。
『この分なら、思ったよりも早く会社に戻れるかもしれない』
私はそんなことを考えるようになっていた。
そんなある日の夕方、私は何気なく、ずっと開けていなかったパソコンのメールボックスを開いた。今まで、そんなことをする余裕すらなかったのだ。
宣伝やらセールスやらどうでもいいようなメールばかりだった。
ところが、スクロールしていくと、私の心に火矢のように飛び込んでくるメールがあった。『いまだにお元気ですか』という奇妙なタイトルで、発信先は、川辺と書いてあった。
全身の毛穴から汗が吹き出してきた。そうして、私の心と体は、全力で、『このメールを読んではいけない』と叫んでいた。
それでもそれでも、私は何かに引きずられるようにしてメールをクリックしてしまった。
「いまだにお元気ですか?
あなたにとってうれしい知らせをお伝えしましょう。
あなたのご尽力のおかげで、無事に、教会は分裂しました。
私についてくる人たちと、あの反逆者についていく人たちに分かれたのです。
このことは、ひとえに、悪魔の子であるあなたの働きによるものです。
あなたも、この良い知らせを聞いて、十分、満足されることでしょう。
でも、あなたは反逆者の方にも行くこともできないのです。
なぜなら、あなたは、私にとって裏切り者のユダであるばかりではなく、反逆者の彼らにとってもスパイ活動を働いた裏切り者なのですから。
キリスト教界の中に、あなたの行ける教会などひとつもないでしょう。
あなたはあなたにふさわしい、火と硫黄の燃えるゲヘナ(地獄の別表現)に行くしかないのです。
おめでとう。」
ちょっと良くなったかと思われた私の胸の傷は、またぱっくりと割れて、すごい勢いで血が吹き出しているようだった。
部屋には西陽がさしていた。真っ赤に染まった陽の中で、私は苦しみのあまり、呻めき、転がった。他にどうすることもなかった。
目からとめどない涙が吹き出していた。
「神様、神様、あなたはどこにおられるのですか?神様…」
私は、大声でそう叫んだ。喉が枯れるほど叫んだ。
けれど、太陽が落ち、闇の帷が降りてきても、何の返事もなかった。
私は闇の中で、まだ生まれる前の子供のように、自分の体を抱きしめながら、ただ嗚咽を続けていた。