目が覚めた。
起きると、はまっちも隣にいて、ぼくたちは恋人がよくしているように手をつないでいた。
はまっちの顔を見ると、まだ頬が濡れていた。ぼくの頬も冷たい。
ふたりで辺りを見回すと、ぼくたちは荒野に横になっていた。枯れた木が2、3本生えているだけで他には何もない。
喉に焼け付くような渇きを感じて、埃を払って、ぼくたちは立ち上がった。
はまっちはぼくの腕にしがみついていた。
「水を探しに行こう」
「ここから離れたくない」
はまっちはますます強くしがみつく。
けれど、そうしているうちに、渇きはいよいよ激しくなり、喉に激しい痛みを覚えてきた。
「やはり、水を探しに行こう」
「うん…」
かぼそい声ではまっちは返事をした。
ぼくたちは、よろよろ歩いた。足取りは軽いとは言えなかった。
それでも、渇きをとどめてくれる水を求めて探し歩いた。
けれど、どこに水はあるのだろう?
その時、鋭く高い鳴き声が耳に入ってきた。見上げると雲ひとつない空高く、鷹が一匹舞っていた。そして、鷹はしばらく同じところを回っていたが、そのうち、ひょいと急に方向を変えると、一直線に飛び去った。その方向を見ると、地平線の彼方に緑の点がぽつんと見えた。
…
そこから、ふたりでどれぐらい歩いたのかわからない。思わず、左腕の腕時計を眺めると、針は止まっている。
『どういうことだろう?』
はまっちは疲れ切っているのか、沈黙している。
そうして歩き続けていくと、あれほど遥か遠くに思えた緑の点が巨大な森となって現れた。
森に入る道は狭く、ふたりで横に並んで歩くことはできなかった。
ぼくたちは、しかたなく、つないでいた手を離して、ぼくが先にはまっちが後ろになって進んでいった。
少し歩くたびに、ぼくははまっちがちゃんとついてきているか確認する。
森の中は思ったよりも明るく、そして涼しく、緑の陽光がぼくたちの顔を照らした。
足元には、木の葉が数知れなく落ちていて、クッションの上を歩いているようだった。
何度か振り返るたびに、はまっちの顔色はだんだんと回復して、時折、笑顔を見せるようになっていった。
そうして、なおも歩いていると、後ろから声がした。
「うえっち、足元!」
そう言われて白いスニーカーの足元をじっと見てみると、足が2、3センチぐらい水の流れに浸かっていた。
今すぐ、この水を掬って飲んでしまいたい気持ちに駆られたが、心の中の何かがおしとどめた。
さらに歩いていると、ずんずんと水は深くなり、くるぶしまでになり、足首までに、膝までに、そうして腰までになった。
進む方向にひときわ輝く光が見えてきた。そこを目指して、ぼくたちはざっざっざっと川の流れの中を進んでいった。