無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 66〜H3心に輝く星のように

「あのね、藤堂さん」

わたしは、藤堂さんの優しさに心が解きほぐされたのか、今までのことを語りたくなった。

「藤堂さんじゃなくて怜でいいわ、浜崎さんも幸子でいい?」

「ええ」

「幸子、あなたが言いたいと思ったことは何でも言っていいわ。でも、無理をしないと言えないようなことは言わなくていいのよ」

怜の大人っぽい語り口に驚いたが、その裏にある温かさがじんわりと伝わってきた。

「怜、ホームルームの時のこと覚えている?」

「ええ」

「男子にからかわれたこと」

「そうね」

怜の表情は変わらない。好奇心で聞いていないのがわかる。深海で話しているように静かで、わたしの言葉が吸い込まれていく。近すぎないが、遠すぎもせず、この距離感が快い。

「あれ、半分本当なの」

「半分?」

「そう、彼氏かわからないけど、わたしにはとても大切な人がいることは本当」

「幸子にとってとても大切な人なのね」

怜は瞼を閉じた。

「その人は引っ越しして、別の中学に通っているの。だから、今は前のようには会えなくて、何だかとても寂しい」

「とても寂しいのね」

「そう、いつか、何も気にせず、自由に会える時が来たら…」

怜は紅茶を一口飲んで、それから目を開いて、わたしを見つめた。

「願いは必ずかなうわ、願いを心の空に輝かせ続けるなら」

「願いを…輝かせ続ける…心の空に?」

「そう。もしかしたら、もう幸子の心の夜空に、その星は輝いているかもしれない」

わたしは目を閉じてみた、何だかジンジンとする胸の奥に、夜空があって、星がひとつだけ輝いているような気がする。

「確かに、そんな気がする」

「…その星が幸子をちゃんと導いてくれるわ、あなたが望むところに」

胸のジンジンが強くなってきて、涙が目にまで溢れてきた。

わたしは、怜に、自分の家のことも話した。パパとママのこと、パパが最近、帰ってこなくなったこと、それからママが寝込んでいること、すべては自分のせいだと思うことを。

怜は他の友達のように、『かわいそうだね』とか『つらいね』とか『大変だね』とかは一切言わなかった。ただ、淡々とわたしの話を聞いてくれた、わたしの言葉がそのまま、ありのまま、怜の心の中に吸い込まれていく感じだった。

わたしは、自分の寂しさも、悲しさも、自分を責める気持ちを忘れてただぼーっとしていた。それから、どれだけ時間が過ぎたことだろう。

「今度、一度、幸子の大切な人に会わせてくれない?」

とポツリと言った。

一瞬、どんな意味なんだろうと思ったが、また心地よい状態に、知らないうちに包まれていた、心に星が輝いていることだけ感じながら。