福井君のことをぐるぐると考えていたが、頭の中で、いつの間にやら、福井君はうえっちの顔に変わっていった。
『うえっちはどうしているだろう?わたしのことなんか、もう忘れちゃったかな?』
そう思うと落ち着いていられない。左足首には青色のミサンガがある、もうボロボロになっていたが、何度も何度も修繕して結び直している。
『ミサンガをまだ、つけてくれているのだろうか?ああ、オムレツもうえっちにまだ、食べてもらってないよ』
ママはいない、わたしは机の引き出しの中から、花柄の便箋とお気に入りのペンを取り出した。
そして、ペンを動かしていると、思いが自然と溢れてくる。
『うえっち、お元気ですか?
公園で会って以来、もう1年以上になるのですね。
うえっちは変わりましたか?背は大きくなりましたか、髪型は変わりましたか、話し方は前と違うのですか?』
ここまで書いて、この前、うえっちらしき人を、いやうえっちを、あのモデルみたいな人と歩いているうえっちを見た時のことを思い出して、胸がズキンと痛くなった。
『わたしの中のうえっちは変わっていません、今もあの時のままで、あの小屋でふたりで約束を交わした時のままで。
うえっちに会いたい、そして、あの日、ふたりでスーパーに行った時のように、また並んで手をつないで同じ道を歩きたい。
でも、あの夢の中で、とどまることをしないで、前へ向かう道を、わたしたちがそれぞれ、選んでしまった以上、わたしたちはまた道が交わるその日まで、この道を歩むことになるのでしょうね。
でも、いつか、必ず、会いたい。17歳の7月7日、あの小屋で待っています。
はまっちより』
ペンはまるで勝手に動いて、こんな文章が出てきてしまった。
何で、今すぐ会うことではなく、17歳の7月7日、七夕の日に待っているなんて書いてしまっただろう。自分で自分が分からない。今すぐに会ってもいいはずなのに。
4年後なんて待てるだろうか、わたしもうえっちも。
でも、心の中で、誰かが『それでいい』と言っているような気がする。
次の日、学校で、花村さんに手紙を渡してしまった。
もう後戻りはできない。わたしは17歳の7月7日に向けて、自分の道を自分の足で歩み続けるだけだ、うえっちに会うその日まで。
花村さんは、今は付き合ってないが、高村君に手紙を渡してくれた。高村君は、自分の名前で封筒に入れて、うえっちに送ってくれるそうだ。
振り返らない、未来にいるうえっちのところまで、わたしはわたしの人生を、わたしなりに生きて行こう。