無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 124〜H35 退行

「えっ」

うえっちは、あげかけた腰をまた席におろした。何で、わたしはこんな不意打ちのように、こんな大切な言葉を言ってしまったんだろう。

『その答えは、もう自分でわかっているじゃない』

そう、わたしは、もううえっちを誰にも取られたくないのだ。

「うえっち、わたしと付き合ってください」

わたしは同じ言葉を繰り返した。聞こえてしまったのか、席の向こうに座っているJKがこちらを見ている。

うえっちは、じっとわたしを見る。そして、なぜか、苦悶の表情を浮かべる。

その表情を見ていると、怖くて怖くて、すぐに目に涙が溜まってきてしまう。

でも、最大限の勇気を奮い立たせて、わたしは言う。

「うえっちが好きです、ずっとずっと、あの時から」

あの時っていつだろう、あの小屋で一緒にいた時、それともその前から。

うえっちは、まだ黙っている。

どうして?どうして、すぐ返事してくれないの?

「わかった、はまっちと付き合うよ。ぼくと付き合って、はまっち」

そう言ったうえっちの姿は、なんだか小5の時のうえっちよりももっと幼く見えた。小さな小さな男の子のように見える、どうして何だろう、なんで何だろう。

でも、そんなことは気にしていられない。そんなことを気にしていたら、うえっちはどこかに行ってしまう。

近づいたふたりの道はまた離れてしまう、離れ離れになってしまう。

つかまなきゃ、今、この時をつかまきゃ。

「ありがとう、うえっち。うれしい」

わたしは思い切りの笑顔を作って、うえっちに微笑んでみせた。

「今は…とにかく、授業始まっちゃうよ。行こう」

「うん」

わたしたちは、塾へと急いだ。

わたしは、わたしの左を歩いているうえっちの右手をとって握った。

涙がとめどなく溢れてくる、ああ、あの時、小5のふたりが初めて手を握ってスーパーに向かっていたあのシーンが頭の中に浮かんできて。

でも、わたしの涙は冷たい、どうしてだろう、外はこんなに暑いのに。

塾の教室に着くと、うえっちはさりげなく手を解く。

教室を見ると、あの女の子は来ていない。

席の順番ははっきり決まっていないから、福井君と怜はわたしに気を使ったのか、わたしとうえっちを窓側の左の一番後ろの席に座らせてくれた。

わたしはうえっちの左に座る。

「涙が出ているよ」

うえっちはハンカチを差し出してくれる。わたしは受け取って、涙をぬぐう。

「恥ずかしいな」

「恥ずかしくないよ、かわいいよ」

うえっちの言葉は、わたしの胸の一番中心まで染みとおる気がする。

「ありがとね、うえっち」

「ううん、こちらこそ。はまっち、ありがとね」

わたしは小5のあの時にかえったような安堵感を覚えた、それがかりそめのものだとしても。