無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 110〜U27 催眠?

あるところに、男の子がいた。

男の子は、星の砂を漁る仕事をしていた。

家が貧しかったから、男の子が漁る星の砂を市場で売って、一家は暮らしていた。

その日も、川で男の子が絹でできた目の細かい網を使って、星を漁っていると、そばにひとりの女の子がやってきた。

女の子も、星の砂を漁ろうとしたが、綿でできた目の粗い網では星の砂はほとんど掬うことはできない。

男の子が女の子を見ると、その子はどこか自分に似ているようでもあり、違うようでもあった。

懐かしい、前に会ったことのあるようでもあり、心をときめかせる、全く会ったことのないようでもあった。

「星の砂を、この網をとって一緒に取ろうよ」

男の子は言った。

「うん、ありがとう。あなたと一緒に取れることがうれしいわ」

女の子は言った。

ふたりで一緒に、手と手を合わせて、絹の網を引くと、いつもより何倍もの星の砂を取ることができた。

そうして、ふたりは、来る日も来る日も、一緒に希望の星の砂を漁った。

ところが、ある日も来てみると、女の子がいない。

いくら待っても来ない。

項垂れていたが、顔を上げてみると、川の向こう岸に女の子はいた。

呼びかけてみたが、声は届かない。

口の動きを読み取ってみると、「あなたはあなたの星を漁って」と言っているようにも思える。

そして、女の子も、向こうで自分の星を漁っている。

男の子は、自分で自分の星の砂を網で掬い始めた。

すると、掬えば掬うほど、二人の立っている川の幅は狭くなり、二人の遠い距離が近くなるように思われる。

男の子は、夢中になって、毎日、家族のためではなく、女の子のためでもなく、ただ自分のために、自由の星を獲り始めた。

そうやって、夢中になっていると、もはや女の子のことも忘れてしまっていた。
時が過ぎ、男の子はたくましい男性になっていた。

男性が網で星をひと掬いすると、向こう岸とこちら岸がつながった。

目を上げてみると、そこには、知らない美しい女性が立っていた。

一瞬、驚いたように見つめあって、ほとんど同時に言った。

「初めまして」

「それでは、覚醒した状態に戻ってきます」

「ひとーつ、心と身体に爽やかな風が流れ込んできます」

「ふたーつ、心と身体がだんだん、かるーくなってきます」

「みっつ、大きく深呼吸を1回か2回か3回して、はっきりと目を覚まします」

ぼくは、目を覚ました。前に藤堂さんが座っていた。

「どうだったかな?」

「なんだか夢を見ていたような…でも意識はありました」

「それはトランスという状態だよ」

「トランス?」

アイスティーの氷はすっかり溶けていた。ぼくはちょっと生ぬるくなったアイスティーをごくりと飲んだ。

その後、特待生の説明を聞いた。特待生になるのに、特別な条件はないこと。ただ、家の人に許可を取ること、特待生になったら、基本、塾の授業は全部出ること、オール4以上の成績をおさめることだった。
ぼくは、母に何かの許可をもらうことをいつも恐れていたが、特に恐れもなしに、家に帰るとすぐ、母に許可をもらった。母は無料だし、近所なのであっさりOKをくれた。

ぼくは晴れて、無限塾の塾生になった。