無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 71〜H6/U6公園での再会

H

うえっちを待っている間、何だか落ち着かなかった。鍵の開かないあの小屋のことが頭から離れなくて、何だか気持ちが沈み込んでいくような感じがした。

「ねえ、幸子は大切な人と、今だけ楽しければいいの、それともずっと続く関係を望んでいるの?」

なんで怜がいきなりそんなことを聞くのか、訝しげに思ったが、答えは決まってる。あの誓いからずっと…変わらない、変わるはずもない。それが幼さ故になされた誓いであったとしても。

「もちろん、ずっと続く関係を願っているわ」

「そう、ならいいわ」

怜は痛いほどまっすぐなまなざしを矢のようにこちらに向けて、そう言ってくる。『なら、いいわ』、何がいいんだろうか?

U

あのベンチに、はまっちともうひとりの女の子が並んで座っているのを見つけると、ぼくは小学生に帰ったように、いたずらっぽい試みを思いついた。後ろから急に回り込んで、はまっちを驚かそうと言うのだ。あのはまっちなら、いいリアクションをしてくれるに違いない。

ぼくは後ろから子猫のように足音をさせずに近づいた。左の女の子は髪をロングにしていた、右の女の子、おそらくはまっちは髪をポニーテールにしていた。風がそよいできて、彼女らの髪を揺らしていた。なんだかとてもいい香りが鼻をかすめた。けれど、ぼくはそんなことに負けないで、全速力で前に回り込んで言った。

「わっ」
H

そんな思いに耽っていたら、男の子が目の前に現れた。わっと叫んでいた。

『あれっ、誰?』

一瞬、本当に誰だかわからなかった。その一瞬の後、うえっちだとわかったが、うえっちってこんな子供っぽい真似をするかしらと思ってしまって、声が出なかった。

そんな私を尻目に、怜が淡々と言った。

「上地君ね、幸子からいつも聞いているわ。初めまして、藤堂怜です。よろしくね」

うえっちは、開始のゴングが鳴るやいなや、いきなりノックアウトを期したボクサーのようだった。何だか呆然としている。

「うえっち、驚かそうとそうとしてくれたのね、ありがとう」

「怜、こちらがうえっち、ううん、上地智彦君よ」

U

ぼくはすべりにすべりまくった。そして、目の前にいる女性、あえて女性と言うしかない。はまっちともうひとりの女性、はまっちの友達はとても大人に見えた。はまっちの友達は白いワンピースを着ていた、はまっちは白いブラウスに抜けるように青いスカートを身につけていた。

そのふたりの前で、こんな子供っぽい真似をしたことが恥ずかしくてたまらなかった。どうしてこんなことをしたんだろう。
けれど、はまっちの友達は、ぼくから目を逸らすこともなく、その瞳にはどんな軽蔑の色を浮かべることもなく、深さが知られない海のようなまなざしでこちらを見ていた。

対照的に、はまっちの方がちょっと戸惑っているようだった。

『そうか、もうぼくたちはもう小学生の頃のふたりではないんだ、あの頃のふたりではないんだ』

そんな思いがぼくの心をさらに締め付けた。