無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 102〜U 23 崖の上に立って

それから、ぼくたちは3人で会うことが習慣のようになった、場所はいつも家の近くのファミレス。舌を出した女の子のキャラクターの人形がお出迎えしてくれる。

それにつれ、ぼくの評判はますます悪いものになっていった。

時には、机の上にここに書けないような悪口がいっぱいに書かれ、決して好意の印ではない白い菊が置かれていたこともしばしばだった。みんなの目が突き刺さるように冷たい。担任は止めようともせず、同調するかのようだった。

家では家で、相変わらずの母親だったし、ぼくの胃はキリキリ痛み、めまいがしたり、身体にあちこち変調もきたすようになった。

急に、頭の一部が膨れたり、手をシャーペンでなぞるとミミズ腫れになって浮かび上がったりした。

病院には行かなかった。病院に行ったところで、原因はストレスと言われそうだし、ぼくが病気だと知ると、そういう時にこそ、母はここぞとばかり攻撃してくるのだ。

小さな頃も、病気になったぼくの枕元で、母は看病するどころか、ぼくがいかに自分が悪くて、自分の不養生が原因で病気になったのか(今だったら、病気になったのは自己責任と言うだろうが)、えんえんと聞かせる。

ぼくは弱っているので、言い返す力もない。

だから、病気になってそのことが知られると、身体のダメージ以上に心のダメージの方がもっと大きい。

決して、母に知られてはならない。

自分がもうぎりぎりのところにいるのは薄々、感じている。

ぼくは教室に行く気力が出ない。

学校に来ると、いきなり、1年の時の担任の大橋先生のところに行って、部室の鍵をもらう。そこのところは大橋先生もわかっているのか、黙って鍵を渡してくれる。

前は、部室は、休み時間とか、お昼とか、もちろん放課後の部活とかにいるものだったが、今や授業中も、ぼくは部室にいた。

さすがに、授業中まで、佐伯さんがいることはない。ぼくよりはまだ、うまくやっているのかもしれない。

『どうも、ぼくは札付きの不良からいじめられっ子になってしまったのかもしれない』と、誰もいない部屋で思ってみたりする。

勉強で遅れるのも嫌なので、教科書を開くがいっこうに頭に入らない。

何か読む本はないかと、黒鞄の中を覗くと、星新一の短編集があって、これなら読めるんじゃないかと開いてみる。

すると、中から花柄の便箋が出てくる。

そんなこともあるはずがないのに、あたりに誰かいないかと思ってあたりを見回す。

『そうだ、絶対、母に見つからないようにこの本に挟んでおいたんだっけ』

ぼくは、高村君から送られた封筒に入っていたこの手紙を、何だか読む勇気がなくて、何か決定的なことが書いてあるような気がして、何週間も放置していた。

けれど、今、ぼくは心の底からはまっちを求めていた、このひとりぼっちの教室で。