無意識さんとともに

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聖人A 36 プレリュード

”COME, HOLY SPIRIT!”(聖霊よ、来てください)

ヒッピー風のその人は言うと、僕は上から何か力が降ってくるのを感じて、立ったままジャンピングし出した。

そして、そのまま、床に倒れ込んだ。

そうすると、彼はさらに、倒れている僕の上方に手をかざして言う。

”MORE POWER, MORE, MORE."(もっと力を、もっと、もっと)

僕は、あろうことか倒れたまま、さらに身体が垂直に跳ね出す。

そして、お腹の中から笑いがこみ上げてきて、思わず笑い出す。

すると、目を見開いている僕に向かって、彼は親指を立てて言う。

"GOOD."

僕が予想していたものとは違って、頭の中はシーンと醒めている。

ただ、何がおもしろいのか、わからないが笑いが溢れてくる。

そうやって、15分ぐらい、倒れたまま、飛び跳ねたり笑い続けたりした後に、僕は起き上がった。

そうして、ふらふらと歩き出すと、急に声がした。

「うらやましいわ」

振り返ると、そこには、日本人の10代の女の子がいた。どうやら、僕と同じぐらいの年齢らしい。

何だか松沢さんにちょっと似ている。

顔といい、スタイルといい…そんな不謹慎なことを考えている自分に驚いて、僕は首を振る。

「私なんか、もうここに1ヶ月以上いるけれど、あなたのような現象をまだ体験したことがないのよ」

そこから会話が始まって話し出すと、同じぐらいの年齢と思ったのは僕の勘違いで、実際は大学生のようだった。

「コツがあったら教えてくれない?」

「コツと言ってもなあ、わからないよ。でも、頭を空っぽにして、神様にフォーカスするのがコツかもしれない」

僕は口から出まかせの適当な言葉を出す。
「わかった、やってみる。ありがとう。じゃあ、またね。私はもう一度、列に並んで祈りを受けてくる」

僕は、後ろ髪を引かれるような思いがしたが、いったんホテルの部屋に帰ってから、カロリーメイトを食べて休んでからまた夜の集会に来ようと決心した。

部屋に帰って、カロリーメイトを齧り、ベッドの上に横になってからも僕はその女の子のことをぼーっと考えていた。
『おいおい、これで僕は本当に聖霊に満たされたと言えるのだろうか?』

そんなことを思っているうちに、僕はうつらうつらして、いつの間にやら眠ってしまった。

気がつくと、辺りは真っ暗になっていた。

『しまった、もう夜の集会が始まる』

僕は急いで起きて、ホテルを飛び出し、教会に向かった。

両開きの扉を開くと、今度は椅子がびっしりと並べられ、先ほどどころではない、数千人の人がひしめき合っていた。

『これじゃ、あの子に会うことはできないかもしれない』

僕はそんなことを考えていた。