無意識さんとともに

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催眠!青春!オルタナティヴストーリー 164 練習相手

さて、イエスセットを使った催眠を練習すると言っても、僕には先立つものがない。と言ってもお金のことではなく、練習相手になってくれそうな友達のことだが。

こういういざという時、頭にパッと浮かぶのは、神楽坂さんだ。

僕は、電話してみた。女の人に電話するのは、やや緊張するが、そんなことも言ってはいられない。

「もしもし、神楽坂さんのお宅ですか?」

「おっ、上地君、久しぶりだね」

神楽坂さん自身が出て、ホッとした。

「そういえば、神楽坂さん、催眠に興味がありますか?」

「興味も何も、ミルトン・エリクソンをよく読んでいるよ」

僕は、何だかびっくりしたが、考えてみると意外なことでもないかもしれない。

「それでしたら、ちょっと催眠の練習を一緒にさせてくださいませんか?」

「そうだなあ…確かに興味があるんだけど、男女がふたりで催眠の練習はちょっと卑猥な響きがあるな」

「そうですよね」

「私は構わないんだけどね…そうだ、紗奈を呼ぼう。傍目から見たら、もっと危ないかもしれないけれど、アハハ」

僕は赤面した。

「ところで、神楽坂さんは、もう3年生ですよね、受験勉強の方は大丈夫なんですか?」

「それ、今、聞く?最初に、聞くことじゃないかな」

「すみません」

「いいの、いいの。そんなにまにうけないで。もう、学内推薦で行くつもりだから」

「そうなんですか?」

「そう、じゃあ、今度の日曜日、10時にうちに来てくれるかな?」

「よろしくお願いします。紗奈も上地君に会えるのをきっと喜ぶと思うよ」

電話を切った。なんだかんだあると、結局、神楽坂さんに頼ってしまう、これはいいことかな悪いことかなと、はたと考え込んでしまった。

そうだと思い出したように、心に聞いてみた。

『心よ、こうやって、神楽坂さんに頼ってしまうことは情けないこと?』

『情けないことなんてないよ。そういう人がいるってことはラッキーじゃないか』

『心よ、ラッキーなんだ?』

『そうだよ、友達は大切にしなよ。しかも、お互いに影響しあって、向上していける友達なんてそんなに得られるものじゃないよ』

『心よ、神楽坂さんも僕のことを友達と思ってくれているのかな?』

『それは間違いない。君と話す時の彼女の様子をよく見なよ。彼女らしさ爆発って感じだよ』

『心よ、それはよかった』

『そうだね、それから佐伯さんのことも友達として、忘れちゃだめだよ』

『心よ、佐伯さんのことも?』

『そうそう、浜崎さんのこともあって、何となく佐伯さんのことを忘れようとしているでしょ?』

心は痛いことを突いてくる。はまっちと会っていない今、何だか、佐伯さんとも距離をとって連絡しないでいた。

『佐伯さんもあなたの友達でしょ?』

『心よ、うん、そうだね』