無意識さんとともに

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聖人A 61 導き?

それから、御堂で会うたびに、木製のベンチでRさんのために祈った。

Rさんは力のない弱々しい感じだったのに、だんだん、顔色もよく頬も薔薇色になってきたように見える。

「最近は、自分でも祈るんですが、聖霊様ってすごいですね」

「そうですね」

僕はちょっと気のない返事をした。

自動販売機で飲み物を買う時にも、聖霊に聞くと教えてくれるんです」

「すごいですね」

僕はそう言いつつも、『それはちょっと行き過ぎじゃないか』と心の中で思っていた。

もう秋が終わり、冬も近い。風が冷たい。

「私、実はとても大きな罪を過去に犯して、罪悪感を拭うことができなかったんです」

「そうなんですか?」

僕は、急にスイッチが入ったロボットのように、Rさんに注意を向けた。

「それが、佐藤さんが祈ってくれて聖霊に満たされてから、初めて罪悪感が消えたんです」

たちまち、Rさんの目に涙が溢れる。

「よかったです、そうだとすれば、それは僕がしたんじゃない。神様のお導きです」

「神様のお導きだとしても、佐藤さんを通して与えられた恵みですから、佐藤さんには本当に感謝しています」

そうして、Rさんは、本格的に泣きながら、自分が中学生時代に犯したという罪を僕に話した。

確かに、人に知られても知られなくても、スティグマになりそうな深刻な罪だった。

「よく、そんな罪を背負って、それでも今まで生きてこられましたね」

僕は、自分の聖人モードを発動して、そう言った。

「神様は、こんな私でも愛していてくださるのですか?」

Rさんは上目遣いで僕を見て言う。何だか、Rさんが可憐に思えて仕方ない。

「Rさんにご自身の聖霊を注いだということは、神様が誰よりもRさんを愛しておられる証拠ですよ」

僕はそう言いながら頬を赤らめた。神様のことを言っているのに、まるで自分がRさんに告白しているような気がする。

「ありがとう、ありがとう、ありがとう」

Rさんは、いきなり、僕の胸に飛び込んで幼い女の子のように泣きじゃくる。

僕は、ためらったが、Rさんを抱きしめてそれを受け止める。

そうやって、しばらくした後、Rさんはようやく泣き止んだ。

「これで、私たち、お付き合いするしかありませんね」

顔を上げて僕に言う。

「お付き合いするっていうことが神様の御心っていう意味ですか?」

「そうです、今、聖霊様が『この人とお付き合いしなさい』と言われました」

今、考えると、何とも変な話だが、僕たちはそれで付き合うことになった。