「心よ、あの人が私に言ったことが気になってたまらないけど、私は本当はどんなふうに感じているの?」
「何も感じていない」
「えっ、心よ、何も感じていないの?」
「そう、何も感じていない」
こんな心とのやりとりがよくあります。
自分の意識では、波だったり、暴風だったりするのですが、心は何も感じていないと。
では、どうしたらいいのでしょうか?
「心よ、この思いはどこから来たの?」
「支配者が入れてきた思い」
「わかった。心よ、この思いをオリジナルに返してください」
かくして、しばらくすると、あれほど自分を悩ませていた思いが嘘のように消えます。
それで、めでたしめでたしならばいいのですが、ともすると、また、同じことか違うことかやってきて、自分を黒雲のように覆ったりするのです。
その時も、慌てず、オリジナルに返すということは基本ですが、あと何ができるでしょうか?
ひとつは、普段から、心に支配と邪魔を排除してもらうことを、何があってもなくても習慣化することです。歯磨きのように、心に支配と邪魔を排除してもらいます。
もうひとつは、トランスの中で生活することです。
ええっ、トランスの中で生活する?
そうです、トランスの中で生活するのです。
トランスの中で生活するというと、まるで薬物中毒のように聞こえますが、それはトランスを何か脳がトリップした状態と考えているからです。
トランスとは、私がもうひとりの私である無意識と対面すること(エンカウンター)なのです。
このトランスの中で、意識と無意識は出会い、統合されるのです。
私たちは、トランスの中に入っていない状態の私が私そのもので、トランスの中に入っている私は何だか例外的なもののような感じがしていますが、実は、逆なのです。
トランスの中に入っている時の私こそ本来の私で、トランスの中に入っていない時の私は本来の私から外れた支配された私なのです。
ですから、トランスの中に入ると、その中には、支配者の支配は入ってこれないのです。
そういうトランスの中で生活することによって、支配の影響から脱して、支配の影響を受けずに生きることができるのです。
問題がなくなるのではありません、問題はあるのですが、どうでもいい小さなものに感じられるのです。
今まで、支配の影響を受けて、問題が何倍、何十倍にも感じられていたからです。
問題は単なる問題になります。
落ち着いて対処できるサイズのものに戻るのです。
もちろん、環境そのものが変わるというのとはちょっと違います。
相変わらず、外には雑音があり、喧騒があり、争いがあるのかも知れません。
けれど、そのただなかでも、このトランスという完全防音シェルターに入ってしまえば、それらは何ら自分に影響を及ぼさないのです。
トランスの中で生活する、そんなことができるでしょうか?
できるのです。
まずは、人から催眠を受けてトランスに入ることを重ねて経験し、それから自己催眠を身につけていくことで自分で自分をトランスに入れることができるようになり、だんだんとスムーズに、短時間で、トランスに入ることができるのです。
そうして、トランスの中で生活するようになれば、毎日、無意識の私と対面するようになれば、まるで、鏡の向こうに本来の私を見て、私自身もひとつの鏡になって本来の私を映し出すようになって、
恐れや怒り、恐怖など、本来の私にないものは、
自分からボロボロと抜け落ちていくのです。