無意識さんとともに

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催眠の現象学6 消失

トランスの中に入ったり出たりしていると、いろいろなものが脱落していきます。

無意識の中に浸っているうちに、無意識はついには『嫌だ、嫌だ、嫌だ』と常に叫んでいる自分の中にある嫌悪感にまで届いてきます。

それは、人には触れてほしくない、いやそれどころか、自分でさえ触れたくない開かずの間にあるものなのです。

ところが、無意識は鍵のかかった扉を無理やり開けることはせずに、水のように、また空気のように、扉の中に自然と染み入ってくるようなのです。

そうして、染みて、染みて、開かずの部屋の中に染み入り、染み出した水であり、空気であり無意識さんは、私のもっとも触れたくない、触れれば、悲鳴をあげるほどに痛い真っ黒な嫌悪感に、そっと優しく触れるのです、まるで天使の羽のように。

私は、身構えて、激痛を覚悟するのですが、触れられたそのタッチは激痛どころか、私に何の感覚ももたらさないのです。

そして、不思議なことに、私の黒黒とした嫌悪感は、あれほど大きなものに感じた嫌悪感は、もはやどこにもなくなっているのです。

呆然として、けれど何だかとても軽くなってそこに立ち尽くすだけなのです。

いつの間にか、ドアがパタパタする音が聞こえます、鍵をしっかりかけていたはずの扉が風に吹かれているのです。

「何でもいい、全ては許されていて、あなたは何であってもいい。そうして同じように、あなたの周りの人も全ては許されていて、何であってもいい」

風の音なのか、声なのか、そんなふうに聞こえてくるのです。

今まで自分の中にあった区別が、これでないとだめ、こうじゃないとだめというものが、エリクソニアン催眠や現代催眠はいいけれどそれ以外はダメっていう、それ以外の催眠やユングや宗教や占いやスピリチュアルやオカルトなどに対する嫌悪感がすっぽり消えてしまったのです。
「心よ、そんな区別や嫌悪感がなくなってしまって、これからどうやって生きていったらいいの?」
「空のようにすべてを包み込んで、海のようにすべてを生かす私ととも生きれば、それだけでいいんだよ」