無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 26 発作

最初は有給を消化していって、その次に、私は休職することになった。

「どこか、他の教会に行ってみたらいいんじゃない?礼拝に出ないと力が出ないよ」

そんなふうに、電話で光は呑気なことを言う。

だから、安全そうな他の教会を探し、日曜日に、鉛のように重い体を引きずって行ってみた。

海が見える駅のある教会。

そこもプロテスタントのカリスマ派の教会によくあるように、いわゆる教会の建物ではなくて、まるでカフェのような感じだった。

来ている人はTシャツにジーンズをはいていて、脱力したオープンな感じ。

牧師も同じような格好で、礼拝中もイスについた小さなテーブルにコーヒーやクッキーがサーブされ、みんな、コーヒーを飲み、クッキーを食べながら、牧師のメッセージを聞く。

来ている人も、日本人が半分、外国人が半分といった具合だった。

だから、お祈りも英語でなされたり、聖書朗読も日本語と英語の両方で読まれる。

『ここならば、やっていけるかもしれない』

私はふーっと息を吐いた。

すると、隣にいる、背が高く金髪でがっしりした男性が、私の方を見て、微笑む。

礼拝が終わると、その男性は私に話しかけてきた。

「教会は、初めてですか?」

見た目は外国人なのに、日本人としか思えない流暢な日本語でそう言う。

「いいえ、クリスチャンです」

「どこの教会に行ってらっしゃるんですか?」

「⚪︎⚪︎教会です」

「おお、私、そこの教会に行ったことあります」

急に、流暢な日本語が外国人っぽい言い方になったなと思った瞬間、右の脇腹が刺すように痛くなり、さらに、背骨がくにゃっと折れ曲がるように感じた。

『呼吸ができない』

私は耐えられなくなり、その場にうずくまり、さらにそれさえもできなくなって、床に倒れ込んでしまった。

多くの人が集まってきて、私に視線を注いでいるのを感じたが、どうすることもできない。

呼吸ができない、いや、呼吸はすごい速度でしているのだが、空気が肺に入っていかない。

体が冷たくなって、冷や汗が流れる。

「神様、この青年にあなたの癒しの手を差し伸べ、どうぞ、癒してください」

私の体に手があてられて、祈られているその声が、断続的に耳に入る。

このままだと、意識がブラックアウトしてしまう…初めて行った教会で…そんなことは…そんなことは…できない

「みんな、何をしているの?パニック発作よ、さあ、どいて、どいて」

女性の声が聞こえて、私の頭を片手で持ち上げ、私の口に紙袋があてがわれた。

「さあ、息をゆっくり吐いて」

注:現在では、パニック発作の時、紙袋をあてがって呼吸することは、酸素が減りすぎ、二酸化炭素が増えすぎてしまうので推奨されていません