その後、私には行く教会もなくなった。
一度、福音派の教会の礼拝に出るには出たが、礼拝後、牧師に、「クリスチャンですか？」と尋ねられ、「はい」と答えると、どこの教会出身かをさらに訊かれて答えると、「ここはあなたのような人が来るところではない」と言われた。
一瞬、あの牧師の呪いの言葉が浮かんだ、『キリスト教界の中に、あなたの行ける教会など一つもないでしょう」というあのメールの言葉が。
もちろん、そんなことではなく、実際は、同じキリスト教でも、福音派はカリスマ派を嫌っているというただそれだけのことなのだが、頭ではわかっても、振り払うことができない。
自分は、キリスト教界のみんなに石打ちの刑に処せられているようなそんな気がしてきてしまう。
そんなことを、つい、光に洩らしてしまった。
「教会じゃなくてもいいじゃないの。私の名によって２、３人集まるところが、主イエスがおられるところなのよ」
そんなことを携帯の向こうで言う。
そんなふうに言われたところで、２、３人いれば別だが、ひとりではどうしようもない。もう会社の休職期限も迫ってきている、どうしたらいいのだろう？
不思議なことに人づてに連絡が来た。
何でも、母教会の分裂騒ぎで、どちらにもついていくことができなかった何人かのクリスチャンが、カラオケで礼拝することを考えていて、神崎兄弟もどうですかという誘いだった。
何人かのクリスチャンとは、20代から30代の、青年会で顔を合わせたことはあるが、あまり話したことのない人たちだった。私は、どちらかと年輩の人たちといつもいたから。
スパイをしていた自分の罪を思うと、よく知らない人たちとは言え、母教会の誰かに会って、まして礼拝をするなどとは、思っただけでも、胸がひび割れるように痛いことだった。
それでも、このまま、薬を飲んでいても、よくなることは決してないような気がしてならない。結局、クリスチャンの私には、神様に頼るしかなく、神様に頼るとは、礼拝に出ることだ、そんなふうにしか考えられなかった。
そう思って、決断したが、けれど、カラオケで礼拝をやるって、そんなことができるのだろうか？
神様への冒涜にならないか？
そんな思いが胸の中を駆け巡る。
それでも、それでも、もうこれしかない。
何でも、メッセージとかは持ち回りでやるそうだ。
私は、崖から飛び降りるつもりで、そのクリスチャンたちと会う約束をした。
心がザワザワするのがどうにも止められなかったが、その日がやってきてしまった。
