無意識さんとともに

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催眠の現象学22 恐れ

恐れは最大のチャンスなのかもしれない。

 

支配から逃れようとして、支配が緩んでいろいろな症状がよくなってくると、支配者はありとあらゆる手を使って、自分の力の範囲内から自分の獲物が出ていかなようにする。

 

恐れもそのひとつだ。

 

何度も書いているように、支配者はものまねが上手だ。

本人の声のふりをして1人称でささやいてくる。

「何をやってもムダだ」とか「私のことをわかってくれる人なんてこの世にひとりもいない」、あるいは「私は殺されるかもしれない」ということまで。

 

そうやって、私の中に最大限の恐れをかき立ててくる。

 

けれども、それらは真っ赤な嘘だ。

 

支配者は嘘をつくことしかできない。

本当のことを言うように見えても、99%の真実に1%の嘘が混ぜ込んであり、その1%の嘘という毒によって、私たちを動けないようにだますつもりなのだ。

 

しかし、どんなにだまそうとしても、私たちの自由意志を奪い去ることまではできない。

 

支配者の嘘を信じるかどうかは、私たちの自由である。

 

もちろん、かき立てられた恐怖はリアルであって、本当に、全身の毛の穴から汗が吹き出すほど、震えが止まらないほど怖いものだ。

 

あるいはこういう言い方もできるかもしれない。

 

よくなってきて、さらにそれ以上に進んでいこうとすると、私の前に、謎を問いかけてくるスフィンクスが現れるのだ。

 

スフィンクスは問うてくる。

 

「お前は誰だ?」

 

その問いは、私を揺るがし、怖がらせる。

私は一体、何者なのだ。こんなに弱くて、何もできない、どうしようもない私…

そうして、先に行く気持ちがくじけ、足が止まることもあるかもしれない。

 

けれど、あえて言おう。

 

そう思っているのは、意識の私であり、支配者によって形作られた私なのだ。

 

無意識の私、本来の私ではない。

 

だから、目を閉じ、耳をふさぎ、すべての勇気をひとつに集めて、言う。

「私は私だ」

 

すると、スフィンクスも恐れも幻のように消えて、ただ、目の前には遙かな地平線が私を招いているばかり。

 

私はそこに向かって一歩を踏み出す。