礼拝の終わりに司会が言う。
「今日は、2時から総会があるので、教会でのランチの提供はありません。各自、外に買いに行ってください」
と言っても、ほとんどの人はわかっていたようで、お弁当を持ってきたり、朝来る時にコンビニで買ってきたりしていた。私もコンビニでおにぎりを買ってきていた。
隣でビルがお弁当のナプキンを開く。
出てきたのは、P &Jのサンドウィッチとりんごだ。
日本生まれ日本育ちのアメリカ人、日本語の方が英語より上手くても、食べ物は別なのかもしれない。
そんなことを考えながら、すすまない食欲で小鳥のようにおにぎりをついばむ。
なかなか喉を通っていかないが、無理やり、緑の液体で流し込んだ。
「では、教会員の方は総会のために残ってください。特に、今日は大事な話があるので、必ず残ってください」
急にスィッチが切り替わって、ビリビリとした緊張がみんなの中を走るのが感じられる。
これってなんだろう。
いつもは、テーブルを片付け、イスを並べ直すが、今日はそのままにしておいて総会をおこなう。
教会員以外で残っているのは、私だけだ。
何だか、自分がとてつもなく場違いなところにいるようだが、仕方がない。
今さら、ヨシコ先生との約束を反故にするわけにもいかない。
ひとつしかないエアコンは音を立ててフルに稼働しているが、さすがに昼の2時ともなると、額にうっすら汗をかくほどに暑い。
テーブルを囲んで、牧師、ヨシコ先生、フレンズと言われる信徒は外国人が半分、日本人が半分、みんな、自分の前に、総会資料と聖書と筆記用具を置いている。
「では、始めます」
司会は礼拝の司会をした高木さんという30代の男性、痩せぎすで額のところに青い血管が浮き出ている。
「天のお父様、これから教会の方針を決める総会を行います。どうか、私たちがあなたと主イエスの御心を行えるように、私たちの中に知恵と力の霊を送り、助けてください。特に重大なことを決める時には、私たちがひたすらあなたの言葉である聖書に基づいて決めることができるように導いてください。愛するイエス・キリストのお名前によって、アーメン。」
祈りが終わったと思ったら、彼はもう一度、同じ祈りを英語で繰り返した。
「…さて、まず、教会の決算報告を行います。綾瀬さん、お願いします」
綾瀬さんという20代の女性がやや甘ったるい甲高い声で、会計報告をしていく。
日本語、そして英語という順序で説明していく。
私も霧がかかったような頭で、その説明についていく。
こんな頭でもすぐに目につくのは、献金の額が著しく下がっていることだった。