呪文や遺伝子コードはすぐに効きます。すぐにというのは、数日から1ヶ月ぐらいです。ただ、効果の対象ははっきりしています。
それに比べると、自己催眠は身につけることがそもそも時間がかかります。ひとつの方法を身につけるのに、少なくとも1ヶ月ぐらい、もしかしたら、2、3ヶ月かかることもあるかもしれません。
そうして、効果も即効性というより、じわじわと効いてきます。けれど、じわじわとした効果はだんだんと雪だるま式に積み重なってきます。
対象の効果がはっきりしている呪文や遺伝子コードを点だとすると、自己催眠は面にたとえられるのかもしれません。
自己催眠はこれこれ、こういうことに効くというよりも、自分自身がトランスに入ることが目的だからです。
トランスに入っていくとどうなるのでしょうか?
今の自分が変容していきます。
変容していくと言っても、スーパーマンや魔法使いになるわけではありません。
今の自分が本来の自分に変容していくのです。
具体的には、こだわりがなくなったり、小さなことが気になっていたのが気にならなくなったり、恐れがなくなったり…本来の自分に付着していた色々なものが洗い流され、剥がれ落ちていきます。
ちょっとでも、それを味わうと、自己催眠というのはとても面白くなります。
何だか、心の美容という気さえして、病みつきになります。
前置きはともかくとして、自己催眠の世界に入ってみましょう。
私が自己催眠を教えるのに使っているプリントを、一部変えて、ご紹介します。
この自己催眠の方法は、朝にやるのに向いています。トランスに入るのが目的ですが、今ここにという見当識の感覚を鍛えて、金縛りや妄想、不安などの改善に役立ちます。1日の所要時間は、10分です。
自己催眠のマスター 1(基礎)
目標
自分でトランスに入れるようにする
各ステップ
1 自分との呼吸合わせ
2 自己催眠⑴
1 自分との呼吸合わせ
息を吸う時は状態を後ろにそらし、息を吐くときは前に傾け、自分に呼吸を合わせる
自分に呼吸を合わせているつもりでやる(5分)
2 自己催眠⑴~ベティ・エリクソンの自己催眠1 (4分〜5分)
① お気に入りの物(ペンでも何でもいい)に目をとめ、視覚的体験について、3つのセンテンスを言ってみる
慣れてきたら、特別に物を用意せずに、身の回りの物でやってみる
例
ペンの軸をつまんでいる自分の指先が見えて
ペンの黒いクリップも目に入って
ペンの向こう側のローテーブルも見ることができます
② 聴覚体験に移り、3つのセンテンスを言ってみる
例
外から車の走る音が聞こえて
エアコンの送風音が耳に入って
自分の呼吸する微かな音も聞こえるようです
③ 身体感覚体験について、3つのセンテンスをつくる
例
背中が椅子の背もたれに触れるのを感じて
左手が置いているところと触れる感触を感じて
腰が椅子の座面に落ち着いているのを味わうことができます
④ 視覚的体験について、今度は2つのセンテンスを言ってみる
例
目を凝らしてみると自分の鼻先を見ることができて
テーブルの色も目に入ってきます
⑤ 聴覚体験について、2つのセンテンスを言ってみる
例
外の風の音が聞こえるような聞こえないような
自分の心臓の脈打つ音が聞こえるような聞こえないような気がします
⑥ 身体感覚体験について、2つのセンテンスを言ってみる
例
足が床についている感触を足の裏に感じて
自分の髪が額に触れるのが感じられます
⑦ 覚醒
ひとーつ、心と体に爽やかな風が流れ込んできます
ふたーつ、心と体がだんだん軽ーくなってきます
みっつ、大きく深呼吸をしてスッキリと目を覚まします
注意
1 慣れるまで声を出してやった方がいい
2 一息に言わないで、自分への呼吸合わせをしながら、文節ごとにひと呼吸おいて、息を吐き出すときに言う
3 自分をトランスに入れるつもりで
4 自分にとって自明のことを言う
5 同じ内容でも違うセンテンスで言う
6 視覚→聴覚→身体感覚の順番を、慣れてきたら、必ずしも守らなくていい
7 1ヶ月ないし30セット以上して十分マスターしてから次の段階に入る