無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 33 総会⑶

「そうして、主管(神戸のその教会ではトップをそう呼ぶ)に直接、ルツに手を置いて祈っていただきました。

完治したわけではありませんが、その後、明らかに、娘のルツの病状は好転しています。

主管には、続けて祈りを受けることと、神の奇跡を信じる信仰を持つことを勧められました。

それで、皆様には申し訳ありませんが、今までの教会の在り方から路線を変えて、この奇跡を信じる信仰を進めていきたいと思っているのです。

できれば、愛する皆さんにも、この路線についてきてくださって欲しいのです」

重苦しい沈黙が流れた。

口火を切ったのは、高木さんだった。

「司会から口を挟むのはどうかと思いますが、そうなると、このオアシス・クリスチャンフェローシップアメリカの⚪︎⚪︎チャーチの流れから脱退することになるのでしょうか?」

「当然、そういうことになります」

牧師は特に表情は変えずに言った。

「うーん。それは…」

高木さんはそれきり押し黙ってしまった。

「先生、騙されているんじゃないの?」

先ほど、『神戸の…あれか』と言ったその声が聞こえた。その主の方を見ると、40過ぎの日焼けしていかにも健康そうな、アロハシャツを着た男性だった。

「あの教会はカルトって言われているのは知ってますよね、はっきり言って、先生がそんなカルトの信仰を進めようなんて、まともだと思えないんですよ。何か洗脳されたんじゃないかと」

「いや、そういうことは一切ないです」

「最近、今までのゴスペルソングに代わって、何だか気持ち悪い曲がセレブレーションで使われていますよね、あれもあそこの歌ですよね。
はっきり言って気持ち悪いです。私はついていけません、そんなカルト路線をとるなら、私はこの教会を辞めます」

その男性がはっきりそう言うと、今まで黙っていたその他お大勢の人たち、日本人も外国人もいっせいに意見を言い始めた。

一部の20代の若い人たちを除けば、ほとんどすべて否定的な意見だった。

中には、『この教会に騙された』という意見さえあった。

心臓が早鐘のように打ち、汗が額から流れてくる。

そこにいる人たちの言葉を聞いていると、そうではないことが頭ではわかっているのに、まるで自分に向けられているような気がしてならない。

関係のない自分が総会に出てしまったことを後悔した。

けれど、このまま出ていくことも、怖くて怖くて怖くてできない。

壁の花、いや、壁に押しつぶされている虫のように、胸が割れるように、心臓が真っ二つに裂けているように痛む。

その痛みが私の理性を失わせたのか、私はあろうことか、手をあげてしまった。