日曜日がやって来た。
竜宮城のような格好をした駅から降りると、光が眩しく目に飛び込んでくる。
一緒に降り立った家族連れは、幼い子供を真ん中に手をつないでいている。聞こうとしなくても聞こえてくる「イルカさん」という言葉からすると、たぶん、水族館に向かうのだろう。
他のカップルは、こちらも手を繋いで、左に曲がって海の方に進んで行った。
私はしくしく痛む胸を抱えながら、足早に歩く。誰にも見られたくない気がする。
教会の前まで来ると、大きな窓と透明なドアを通して、中の様子が見える。
私がドアに手を触れた瞬間、
『入らない方がいい』
そう、声が聞こえた。
どうやら、鬱を病んで頭がおかしくなっているのかもしれない。あるいは、私たちクリスチャンがよく言っている神様に近づけさせないようにするサタンの妨げなのだろうか?
私は一瞬立ち止まったが、そんな声も無視して中に入った。
何も変わらない、同じメンバーが席に座って、やはり子供たちは元気に室内を走り回って遊んでいる。
けれど、何かが違う気がしてならない。
それが何かはわからない。でも、透明なコップに入った水に一滴インクを垂らしたような、そんな何か…
そんな思いがまとわりついてきたが、私は振り払っていつもの席についた。
最初に来た時に話しかけてくれたビルが、にこやかに微笑んできて、私たちはハグし合って挨拶を交わす。
「ああ、そうだ。今日は総会があるんだね」
「…そうだね」
私の目は、ビルの顔に何かしら緊張が走るのを見逃さなかった。
一体、どうしたというのだろう?
けれど、何だか、胸の痛みがいよいよ強く感じられて、私はそんなことを気にするほどの余裕はない。自分をイスに座らせて保っておくだけで精一杯だった。
礼拝(ここではセレブレーションと呼ぶのだが)が進み、牧師のメッセージになった。
いつもはジョークを言ってみんなをひとしきり笑わせてから話に入るのだが、今日はジョークがなかった。
「…私たちはただただ、どんな時でも神様に頼り、神様がキリストを通して送ってくださる聖霊の力により頼み、期待するべきです。私たちの中にいてくださる聖霊は、思いもよらない大きなしるしと奇跡を起こしてくれるのです。そういうパワフルな信仰に生きようではありませんか?」
そう言って牧師はメッセージを締め括った。いつもは、みんながみんな、アーメンと答えるのだが、ヨシコ先生とごく少数の人を除いては、そう言うものはなかった。