無意識さんとともに

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催眠の現象学36 自己催眠の味わい

ふらふらと思いがさまよい出して、とても虚しくなることがあります。

自分の外に、自分を満たしてくれて、自分を幸せにしてくれるものがないかとキョロキョロし出すんです。

そんな時は、ありえなくも、支配者のことが懐かしく思えたりします。

支配者に支配されて、生きがいもしなければならないことを与えられて、支配者のコピーになって支配者の人生を生きて、時折、虐待されることもあったけれど、優しくされることもあって、それなりに幸福だったような気がしてくるんです。

そうして、さらに、支配者のふところに多くの仲間もいて、今と違って、ひとりではなかったなあという気さえしてくるんです。

けれど、そんな時に、風が吹いて、風の中に静かな声を聞いて、繰り返し、自分の中に戻っていくんです。

すると、そこでは、私以上の私がいて、私を優しく見つめてくるんです。

もうひとりの私の瞳は、何もない大空のようです。それは、透き通っていて何ものも宿していないんです。

その瞳を覗き込む時、そこに今の私が映るんです。私は一瞬、そこに今の私が映ることが恥ずかしく思われるのですが、もうひとりの私もまた、私の瞳を覗き込むんです。

鏡を2枚、向かい合わせにしたように、光の無限反射が起こり、像の無限反射が起こるんです。

そうして、声が聞こえます。

「私はあなた、あなたは私」

もはや、そこにいるのは2人の私ではなくて、ひとりの私のように感じられるのです。

そうして、私の心は、雲ひとつない、どこまでも広がる青空のようで、空っぽで何も持っていないけれども、それゆえに、全てのものを持っていて満ち満ちている、そんなふうに感じられてくるんです。

私はほっと脱力して、けれど、自分のみぞおちから太陽の無数の光条が輝き出したように温かみを感じて、何気ない人生を、また淡々と歩み出すんです。