礼拝が終わると、いつもは4人でファミレスでランチを食べてから帰るというのがいつものことだったが、その日は違った。
「僕たちはちょっと用事がありますから」、田中君と成島君は、カラオケの受付で支払いを済ませるとそう言う。
「そうか、じゃあ、また来週ね」
私は何気なくそう言った。
「ええ、まあ」
田中君は歯切れの悪い感じでそう言う。
彼らが去っていくのを見送ると、藤堂さんと二人きりになった。
光以外の若い女性と二人、何となく気が引けたが、自然といつものようにファミレスでランチを食べるところに落ち着いてしまう。
午後の陽光がいっぱいに入る窓際の席で、私たちは向かい合わせに座る。
藤堂さんは、少し日に焼けた、いかにも健康そうな顔で、器用にハンバーグをナイフで切ってはフォークで口に運ぶ。
その合間に、タイミングよく、微笑みながら私に話しかける。
「今日のお話、とても良かったです」
「そう、田中兄弟と成島兄弟にはちょっと刺激が強かったかなと思うんだけど」
「そんなことないと思います…今まで、神様を信じていても、どこか信じきれない怖い神様だと思ってきましたから、今日のお話で胸のつかえがとれたようです」
そう、真っ直ぐな目で見てくる藤堂さんの瞳を見て、思わず、『きれいな瞳だな』と心の中でつぶやいて、私は顔を赤らめる。
「そうだね、私自身、神様が、信仰のあるなしにどんな人をも救い、最終的に悪魔さえ救ってくれる全能の愛だと思うと、生まれて初めてホッとした気になる」
私は、そう言いながら、藤堂さんのように器用ではなく、話し出すと口に運ぶ手が止まってしまう。
「そうですよ、私はクリスチャンホームで生まれたんですが、どれだけ、父と母に、神様を持ち出して脅されたかわかりません、『神様がいつもお前を見てるぞ、そんなことをしていると天国に行けなくなるよ』って」
外はいきなり陽が翳ってきたようだ。
「私は大人になってからキリスト教を信じたから、よくわからないけど、確かに、教会でも『神は愛』と言いながら、その舌の根もかわかないうちに、神という名前を持ち出して脅すってことよくあるよね。まして、クリスチャンホームだったら」
「ええ、そうなんです。それでどれぐらい傷ついてきたことか…」
何だか、私の知っている藤堂さんとは別人のように見えた。藤堂さんはもっと話したいようだったが、それは何だかためらわれた。
「いつでも、話はまた聞くよ」
私は、そうは言ったが、小さな透明の筒に差し込んである白い伝票に目をやった。
「行きましょうか?」
「そうだね」
外に出ると、いつ間にか、もう陽が暮れて薄暗かった。