親しい友達にスクリプトを語ってもらったんです。
その言葉は柔らかな光をぼうっと放っていて、少しずつ、私のお腹の奥にしみとおっていくんです。
そうして、気づかなかったのですが、赤く錆びついた南京錠がついている、これも赤く錆びついた開かずの扉を照らし出したんです。
私はそんなものがあるとは思わなかったので、とても驚きました。
すぐさま、そんな扉のことはいち早く忘れ去って、その場を後にしたかったのですが、穏やかな光は優しく扉を照らして、何だかそこから目を離せなくなってしまったんです。
私はしばらく立ち尽くしていました。
それから、何を思ったのか、南京錠を外そうと手で力の限り、引っ張ったんです。
でも、錆びついてボロボロになっているのに、引っ張っても引っ張っても、びくともしないんです。
あまりに夢中で引っ張ったので、私の手は傷つき血が滲んでいました。
けれど、しみとおってくる光は、知らない間に、量を増して、上を見上げると、はらわたの奥の真っ暗な空に、ぽっかりとまあるい光が浮かんでいるのです。
手の痛みも忘れて、空にかかる光に見入っていると、光から何か雫のような言葉がぽとりと降ってきました。
そうして、赤錆びた南京錠の上に落ちると、ふわっと、何ということもなく、南京錠が外れたんです。
私は、自分の手で開かずの扉を開くんです、いつの間にやら、手の傷の治っていることを何の不思議にも思わずに。
中は、真っ暗で入るのが躊躇われましたが、心臓が脈打つたびに、穏やかな光がぐんぐんとそこに入ってくるんです。
勇気を出して踏み込むと、光に照らされたそこは石でできた部屋でした。
部屋の真ん中には、マホガニーの立派なテーブルがあり、テーブルの上には、装飾が施された宝石箱が載っていました。
ところが、いくら目を凝らしてみても、その装飾が何か、私にはわからないのです。
ただ、何だか、ライオンかトラかのような気がしてしまうんです。
宝石箱を開けることが必要だとわかっていても、何だかできないのです。
そんな思いの中で、また立ち尽くしていると、背中に温かい温もりを感じるんです。
姿が見えないのに、背中に手がそっと置かれているんです。
そうして、温もりが背中から、じんわりと広がっていくんです。
背中から体全身へ、体全身から心へ、そうしてまた心から体へと。
温もりは言っているかのようなんです、
「開けても開けなくてもいいよ、開けても君は君だし、開けなくても君は君。私は変わらず君とともにいるよ」
ふと、部屋の上を見上げると、ここにも、やはり、まあるいあの光が私の額を照らしているのに気づくんです。
そうして、また、ぽたりと雫が落ちてきて、今度は私の両目に入るんです。
それから、宝石箱を見ると、そこに装飾されていたのは、麒麟の姿、首を伸ばしてはるか遠くを見つめている1匹の麒麟の姿です。
私はなぜか微笑みながら、ふたに手をかけ、宝石箱を開きます。
そこには何も入っておらず、ただ、鏡が貼られており、自分の姿が映るばかりです。
すると、石でできた部屋が振動し始め、中心からピクンピクンと石がピンク色に変わっていっているんです。
月光に
浸し照らされ
石化せし
我がはらわたは
生身となりぬ