無意識さんとともに

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催眠の現象学61 スーパーコンピューター?

今回のエリクソン読書会は3回目になりますが、さらに前回よりも盛り上がりました。

何というか、参加してくださるメンバーそれぞれが、個性のままに、思いのままに感想や気づきや質問やら脱線やら、自由に語ってくださるのですが、結局、それがエリクソンの隠れた意図を浮き立たせるのです。

ひとりで読んでいる時には、ただぼうっとしてしまって、読み過ごしてしまう部分に、思いがけない宝が潜んでいて、びっくりさせられます。

みんな、ひとりひとりの無意識さんを持ち寄って読むと、こんなにもテキストが多層的に照らされて、いろいろなことがわかってくるんだというのはとても新鮮です。

 

今回は、「間接的暗示」という章で、これからエリクソン催眠勉強会で、間接暗示を学んでいくので、とてもタイムリーでした。

エリクソンの催眠の最大の特徴はこの間接暗示にあるからです。

それを具体例の中で見ていけるのも興味深いです。

ただ、実際、具体例で見ていった時に、エリクソンは、一筋縄ではいかないことをしています。公式通りなんてことはしていないのです。

 

特に、それを感じたのは、「競争」という項目で、エリクソンが競争心の激しい、競争的な人を扱うところです(彼は偏頭痛持ちでした)。

エリクソンは、その人に言うのです。

「…私としてはあなたのことを治したいとは思いませんが、しかしやってみましょう」(「私の声はあなたとともに」p.83)

この箇所には、私を含め、メンバーの多くの人が注目しました。

なぜなら、医者、あるいはセラピストが、私はあなたを治したいとは思わないというのは、いかにも異常なことだからです。

私は、読書会の前に、運動しながらここに線を引いていて、これはどうしてだろうと考えました。
おそらく、競争的な人に、あなたのことを治したいと言ったら、エリクソンに競争心が逆向きに働いて、かえってエリクソンの催眠にかかって治ってやるもんかと抵抗が起きるからだと思っていました。

そういう抵抗を落とすために言ったのではないかと思ったわけです。

 

けれど、読書会では違う意見が出ました。

むしろ、相手の競争心を煽るためにエリクソンはそう言ったのではないかと。

なるほど、その後、エリクソンは、その人に、催眠で、右手と左手がどちらが顔のところまで先に上がるかという競争をさせています!

その前段として、あえて、相手の競争心を利用するために言ったのではないかと、その意見を言われた方は言ったのです。

 

なるほど、面白いです。

自分ひとりでは思いつかなかった見方です。

 

他にも、サボテンの箇所や、エリクソンの娘がダブルバインドを利用しているところや、思いがけない発見がいろいろとありました。

 

もちろん、私の無意識さんも無限の知恵と力を持った方なのですが、そんなみんなの無意識さんを横に繋げてみると、何だかスーパーコンピューターみたいな働きが起きてくるのかもしれません。

 

ある人が、これはリフレクティングチームみたいだと言いましたが、まさにそうです。

リフレクティングチームのようにひとりのクライアントに対する時だけでなく、みんなで同じテキストに向かい合った時も、同じようなことが起きて、無意識さんの輪郭というか、顔というか、より鮮明に浮かび上がってくるのかもしれません。