無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 59 回想につぐ回想

気がつくと、私は、薄暗い部屋にいた。

どれだけ、過去の回想に耽っていたことだろうか?

あれから、私は光にはもちろん、藤堂さんにも一回も会っていない。

会おうとしたことはあったが、怖くて、結局、会うことはできなかった。

そうして、藤堂さんとのカラオケでの礼拝は自然消滅し、私は居場所を失った。どこか、他の教会に行くこともなかった。

さらに、追い討ちをかけるように、ある日、ネットのキリスト教関係の掲示板を何気なく見ていた時に、私のことを書いた投稿を見つけた。

『…光の子らの間に、闇の子が光のふりをして紛れ込むことはよくあることです。

私たちの教会にも、Kという自称クリスチャンがいました。

彼は、牧師を騙し、他の信徒も騙し、二重スパイをして、牧師と信徒を対立させ、混乱させ、教会を分裂させただけにはとどまらず、その後、鬱を発症した後、婚約者を裏切ったそうです。

こういうものには、もはや、神の憐れみは残されておらず、神の怒りと裁きが頭上にくだるばかりです』

私は、目に数千本の針が突き刺さるような気がした。

誰が書いたのだろうか?
牧師か、他の信徒か?
婚約者を裏切ってと書いてあるところを見れば、光が自分は裏切られたと言い回っているのだろう。
この記事を読んだその日、私は発作的に、真夜中、部屋に溜め込んであった薬を大量に飲み込んだ。
意識が戻ったのは、3日後だった。
どうやら、私は朦朧とした状態で、昔の友人に電話をかけたらしい。

そうして、友人が警察に電話をし、警察は窓を破って部屋に入り、私は救急車で病院に連れて行かれ、胃洗浄を受けたらしい。

らしいというのは、何も覚えていないからだ。

このことは、母親にも、会社の上司にも知られることになった。

薬を飲む前に、私は、遺書を母に1通、上司にはメールで書いていたからだ。

私は、自主退職せざるを得なくなった。

表向きは、療養に専念してということだったが、何回も休職して、挙げ句の果てに自殺する社員を置いておくところなどないということだろう。

その後も、私は、2度、死ぬことを試みたが、そう簡単に死ぬことはできなかった。

そのたびに、「待っている」と言った藤堂さんの顔が浮かんだが、それでも連絡を取ることはなかった。

彼女と連絡をとってしまえば、もう私は彼女の思いを振り切れない。

そうして、それは、私と彼女を、完全に、彼らの正義の神の裁きに値するものに定めてしまうことになるから。

いや、それは言い訳に過ぎないかもしれない。

彼女を巻き込むことを恐れているのではなく、自分が、彼女を恐れているのかもしれない。

彼女が言った、広い世界を、彼女と共に。