あまりに早く、電話があった2、3日後、光は三重からこちらにやってきた。
私の住んでいるアパートから徒歩10分のところにアパートを借りたのだ。
とりあえずは、どうしても必要な手荷物だけ持ってきて、他のものは後に実家から送ってもらうなり、購入するなりするらしい。
本来は、うれしくなくてはおかしなはずだが、不安しか感じない自分が訝しかった。
そうして、日曜日、私と藤堂さんと光は、いつものカラオケの入っている商業ビルの前で待ち合わせた。
藤堂さんは待ち合わせの時間より早く到着していたらしい。
「かなり待ったんですか?」
ポツンと立ち尽くす姿に声をかける。
「いえ、今、来たところです」
何だか、寂しげに答える。その姿が何だか愛おしく感じてしまう自分に罪意識を覚える。
光は、待ち合わせの時間をとうに越えて、30分過ぎたところでやってきた。
エレベーターの扉が開いて、満面の笑みでこちらに駆け出してくる。
そうして、いきなり、藤堂さんに抱きつく。
「会いたかったよ、恵ちゃん」
藤堂さんはただただ微笑みを浮かべて、頷くだけだ。
その後で、光は藤堂さんからパッと離れて、私の方に近寄る。
「もしかして、藤堂さんと一緒に来たの?」
「そんなわけないよ」
「そうよね、私たちももう婚約者なんだから」
勝ち誇ったように、光が言う。
「とにかく、入りましょ」
光は藤堂さんの手をぐんぐんと引いて、ビルの中に入っていく。
私も後から仕方なく入っていく。
受付で、空いているいつもの部屋をとって、3と書いてある番号を確認して入る。
「狭ーい。こんなところで、二人でいつも礼拝していたの?」
「ここが…一番…静かな…部屋だから」
途切れ途切れに、藤堂さんが答える。
「冗談よ、うそうそ」
私の隣に光、光の前に藤堂さんという配置で座る。
「さあ、始めようか」
私はこほんと咳をして言い放つ。
CDをセットして、ワーシップソングを歌い出す。
いつも、ここから静かに集中していくのだが、突然、光がフルボリュームで歌い出す。
しかも、いきなり立ち上がって、手拍子までとって、まるで自分の教会でワーシップリーダーをやっているときと同じ感じなのだろう。
座っている私たちを見下ろして、なおも大声で歌い続ける。
さらに、手を高く上げて。
心にとてつもない不協和音が流れる、もちろん、光の歌そのものはプロレベルなのだが、もちろん、そういうことではない。
そう思っているうちに、光は加えて祈り出す。
「神様、あなたの御心に感謝します。
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