無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 55 不協和音

あまりに早く、電話があった2、3日後、光は三重からこちらにやってきた。

私の住んでいるアパートから徒歩10分のところにアパートを借りたのだ。

とりあえずは、どうしても必要な手荷物だけ持ってきて、他のものは後に実家から送ってもらうなり、購入するなりするらしい。

本来は、うれしくなくてはおかしなはずだが、不安しか感じない自分が訝しかった。

そうして、日曜日、私と藤堂さんと光は、いつものカラオケの入っている商業ビルの前で待ち合わせた。

藤堂さんは待ち合わせの時間より早く到着していたらしい。

「かなり待ったんですか?」

ポツンと立ち尽くす姿に声をかける。

「いえ、今、来たところです」

何だか、寂しげに答える。その姿が何だか愛おしく感じてしまう自分に罪意識を覚える。

光は、待ち合わせの時間をとうに越えて、30分過ぎたところでやってきた。

エレベーターの扉が開いて、満面の笑みでこちらに駆け出してくる。

そうして、いきなり、藤堂さんに抱きつく。

「会いたかったよ、恵ちゃん」

藤堂さんはただただ微笑みを浮かべて、頷くだけだ。

その後で、光は藤堂さんからパッと離れて、私の方に近寄る。

「もしかして、藤堂さんと一緒に来たの?」

「そんなわけないよ」

「そうよね、私たちももう婚約者なんだから」

勝ち誇ったように、光が言う。

「とにかく、入りましょ」

光は藤堂さんの手をぐんぐんと引いて、ビルの中に入っていく。

私も後から仕方なく入っていく。

受付で、空いているいつもの部屋をとって、3と書いてある番号を確認して入る。

「狭ーい。こんなところで、二人でいつも礼拝していたの?」

「ここが…一番…静かな…部屋だから」

途切れ途切れに、藤堂さんが答える。

「冗談よ、うそうそ」

私の隣に光、光の前に藤堂さんという配置で座る。

「さあ、始めようか」

私はこほんと咳をして言い放つ。

CDをセットして、ワーシップソングを歌い出す。
いつも、ここから静かに集中していくのだが、突然、光がフルボリュームで歌い出す。

しかも、いきなり立ち上がって、手拍子までとって、まるで自分の教会でワーシップリーダーをやっているときと同じ感じなのだろう。

座っている私たちを見下ろして、なおも大声で歌い続ける。

さらに、手を高く上げて。

心にとてつもない不協和音が流れる、もちろん、光の歌そのものはプロレベルなのだが、もちろん、そういうことではない。

そう思っているうちに、光は加えて祈り出す。

「神様、あなたの御心に感謝します。