無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 60 生ける屍

それから、私の引きこもり生活は1年、続いた。

対人恐怖はだんだんとひどくなってきて、私が外出できるのは、深夜、もう人気のいない時間だけになった。

けれど、深夜、コンビニに行く時さえ、まるで光を厭う害虫のように、コンビニの光は私には眩しすぎた。

店員の顔もろくろく見ずに、私は逃げるように店を出る。

道を行き交う人は誰もいない。

時折、通る車のヘッドライトに、思わず顔を覆う。

部屋に入ると、ホッとため息をつき、引きっぱなしの布団の上で、買ってきたサンドイッチや甘い飲み物を取り出し、食べ出す。

何の味もしない。まるで、プラスチックを食べているようだ。

それでも、食べたものが血糖値を上げてくれるのを期待して、布団の上に、そのまま、横になる。

眠れない…

パソコンを取り出し、お笑いの動画を見るが、面白いとも何とも感じない。
あれほど、小さい頃から好きだった本も読めなくなっている。脳みそが死んでしまったようだ。
完全に、昼夜逆転していた。
そうやって、締め切った雨戸から朝の光が漏れてくると、ようやく、眠気がやってくる。
まるで、吸血鬼のようだ。
ようやく、眠れない、ひとりぼっちの苦しみから解き放たれる。
せめて、せめて、せめて、夢の中では、束の間の幸せを感じさせてくれよ。
そんな、誰が聞くこともない、つぶやきをしながら、私は眠りに入っていく。
けれども、そんな望みは打ち砕かれる。
「ぎゃー」
断末魔のような叫び声で目を覚ます。
けれど、気づけば自分の声なのだ。
どんな夢を見たのかはわからない。
でも、心臓が口から飛び出すと思われるほど、左胸で波打ち、水溜りをつくると思われるほど、冷や汗でぐしゃぐしゃになっていることからすれば、いい夢であろうはずはない。
そして、何より、心が痛い。
体のどこがというより、心が、心が張り裂けるほど痛いのだ。
もちろん、私は、いまだ、全能の愛の神という考えに、一縷の望みを持って、昼となく夜となく、教会に行っていた時以上に、「あなたがいるなら、どうぞ、この地獄から救ってください」と呼びかけていた。
けれど、もちろんというべきか、答えが返ってくることはなかった。
そうして、そんな繰り返しの果てに、私は悟った。
神はいないか、あるいはいるとしても、全能なのではなく、ただ遠くから人間の苦境を眺めて同情するだけの弱い神なのだ。
それなら、どちらでも同じことではないか。
だから、神に呼びかけることもできなくなった。
もう、藤堂さんに会うという思いも潰えた。
いつか、全能の愛の神が自分を奇跡的に救ってくれたなら、人々の責めの声を全部、跳ね返すほどに救ってくれたなら、私は堂々と藤堂さんに会って…
でも、そんなことは決して起こらないのだ。
それから、私は、気力がさらになくなっていた。
もう、自殺する気力さえどこにもなかった、私は生ける屍だった。