無意識さんとともに

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催眠の現象学85 エリクソンの自己催眠のすごさ

面白いことに、エリクソンの手にかかっては催眠に入らない人などいなかったのですが、エリクソン自身は、誰か他の人に催眠をかけてもらってもトランスに入ることがなかったようです。
エリクソン自身の観察力があまりに鋭く、マルチタスクで動いていたので、人に催眠をかけてもらうことが難しかったのかもわかりません。
ところで、今日のエリクソニアン催眠ワークショップで、前回に、「自分は催眠にかからないタイプ」と言っていた人に、練習で当たってしまったので、えらく緊張してしまいました。
催眠誘導をしたのですが、言葉を間違えたり、噛んでしまったり、散々でした。

『こんなんでは、余計、トランスに入れないだろうなあ』と思って、覚醒してもらってから、恐る恐る、「いかがでしたか?」と尋ねると、

「ところどころ、意識がなくなって、眠っているような状態でした」と。

私自身が狐につままれる感じでした。

自分では失敗したと思ったのに、どうしてなんだろうと思いをめぐらして、浮かんできたのは、そう言えば、この頃、また、自己催眠への熱意がよみがえって来ていることと関係あるかもしれないということでした。

エリクソンは、人に催眠をかけてもらってトランスに入るのは難しかったわけですが、彼は、自己催眠によって絶えず、自分をトランスに入れていたのです。

エリクソンは、ポリオの後遺症から来る痛みに対処するために自己催眠を使っていましたが、それだけではなかったのです。

エリクソンは、大学時代に自己催眠状態で論説を執筆した経験から、無意識の創造力を確信し、面接にもこの創造の源を利用しようとした。彼は、トランスに入った方が患者をよりよく理解できると思ったとき面接中に自己催眠トランスに入ったことが何度かあると述べた。…
エリクソンはまた…名高くかなり傲慢な精神科医をトランスに入って治療した経験を語ったことがある。エリクソンは、その患者は自分の無意識ほど賢明ではないと判断し…無意識が働いてくれるのを期待して治療にのぞんだ。ひとたび面接が始まると、エリクソンはあらゆる記憶を失い、2時間後気付いたときには、部屋に一人でいて、机上のフォルダーの中に治療の記録が綴じられていた」(「ミルトン・エリクソン その生涯と治療技法 p.46〜47)

エリクソンは、自己催眠で自由にトランスに入ることができ、記憶がなくなるほど深くトランスに入ることができたことがわかります。

私はこれを読む前は、自己催眠ってこんなもんと勝手に限界というか天井を決めていたのですが、これを読んでガツンとやられました。

それで、再び、自己催眠を熱心に始めた矢先のことだったのです。

私は意識では失敗したと思っていましたが、無意識は確かに働いていて、無意識が働いているそこの部分についてはもしかしたら記憶が飛んでいるのかもしれない、そんなふうに思ったわけです。