支配者も催眠を使うかもしれません。
けれど、支配者の催眠というのは、無意識と繋がる催眠ではありません。
むしろ、無意識との繋がりを絶って、徹底的に意識的にならせようとする催眠です。
それは、無意識によってリソースを引き出し、人が何ができるかを自分で気づくようになる催眠ではなく、
自分がどれだけ無能で何もできないかを思い知らせ、過去の失敗例をあげつらう催眠です。
支配者は、言葉に嫉妬や不安を混ぜ込み、発作の電気ショックで獲物を動けなくします。
そうして、賢い支配者は、論理的に筋の通った正論を、意識的に理性的に考えれば受け入れざるを得ない正論を暗示の言葉として使うのです。
この正論という暗示は金の針です。
それは全く正しく、反論の余地がない、価値のあるアドバイスのようにしか見えません。
だから、この暗示が、金のように高価なものと思い込まされて受け入れてしまうと、この金の針は、心の中心部まで刺し通し、無意識との繋がりを断ち切ろうとするのです。
私たちは、この金の針を受け入れてしまうと、支配者の言いなりになってしまい、支配者に叩かれ放題のサンドバッグになってしまいます。
そうして、あろうことか、いいサンドバッグになることによって、支配者が自分を叩かないようになるとさえ、誤解します。
けれど、いいサンドバッグになればなるほど、支配者はこのサンドバッグを当然のように叩き、弄ぶのです。
支配者は、金の針を中心まで刺し通して、無意識との繋がりを断ち切ったと思っていますが、実は、無意識との繋がりを断ち切ることは決してできません。
なぜなら、支配者の使う催眠は、意識的な催眠であって、心の中心部に達したように見えても、それは意識の範囲内だからです。
無意識はあなたを離れず、そこにいて、あなたが呼ぶのを待っています。
そうして、あなたが呼ぶとき、まるでオセロの黒を一瞬にしてひっくり返して全て白に変えてしまうように、全てを変えてしまいます。
恐るべき無意識は、支配者に支配されたことさえ利用して、全てを変えてしまうのです。
この無意識の力強さを一度でも味わってしまうと、人はどんな不利な状況、どん底の状況、死に頻した状況でも、もう絶望することができないのです。