無意識さんとともに

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黎明〜鬱からの回復 64 催眠ガールとの出会い

達磨静座法は、毎日、続けていた。
この瞑想をすると、自分が動けると思っても本当は動けない場合と自分が動けないと思っても本当は動ける場合の区別がついてくる。

動けない場合はすっぱり諦めて休み、動ける場合は身の回りをちょっと片付けるというごく小さなことでも何かをした。

そうして、この瞑想を続けていけば、自分の鬱は癒やされていくのではないかと思うようになった。

確かに、ひどく死にたいような気持ちに駆られたり、胸が割れるように痛んで涙が止まらないというようなことは、前に比べると少なくなった。

けれど、過去に起きたことを思い返してみたり、あえて、私のことを悪く書いているネットの掲示板を見返したりしてしまうことはやめられなかった。

そして、何より、週のうち、まともに動ける日が2日あればいい方だった。

それでも、週のほぼ全部寝たきりだったことを思えば、すごい進歩なのだが、どんなに瞑想を続けても、この2日より長く、動ける日数が伸びることがなかった。

1日動くと、果てしもない疲労感を感じてしまい、2、3日はまた動けなくなる。

何とか医者に行って、疲労感に効くという漢方薬を出してもらったが、飲んでもほぼ変わりがない。
こんな状態が、また1年以上続いた。

自分の意志で何とかしようと足掻いてはみたが、如何にもこうにも変わらない。

私は、再び、無力感を覚え始めた。
そうして、無力感を感じると、症状が一気に戻されて、頭痛が起きて鬱感がひどくなる。

一体、これ以上、どうしたらいいのだろうか?
そんな時に出会ったのが、あの本だった。

それはAmazonのおすすめで出てきた。
表紙には、ショートヘアの女子高生が街並みを下にして空に浮かんでいる。
ひどく怪しい本にしか思えなかった。

私は見なかったことにして、その本のことを忘れようとした。

けれども、忘れようとしても、心の中で何かの信号が点滅するかのように、あの本の表紙がずっとチラチラして消えることがない。

『とりあえず、騙されたと思って読んでみよう。もう失うものは何もないのだから』

そう思うと、今度は本が来るのが待っていられなくなって、私はKindle版の購入ボタンをクリックした。

そうして、息も付かずに読み通した。

『これは新手のファンタジーなのだろうか?』
それが正直な感想だった。

色々な問題を抱える主人公が、催眠のお師匠さんから催眠を教わることで、人生が違う方向に動き出していく。

あり得ないと思った。

しかも、その催眠とやらが、私がイメージする催眠とは全く違っていた。
スクリプトと呼ばれる物語を読むことが催眠となっているらしいのだ。
ますますあり得ない。

『そんな物語で何かが変わるなんて、おとぎ話じゃないか?』