無意識さんとともに

https://stand.fm/channels/62a48c250984f586c2626e10

催眠!青春!オルタナティヴストーリー 55〜分かれ道

森を出ると、空間が開けていて、泉があった。泉の周りは、なめらかな緑に苔むした石で囲まれており、そこから澄んだ水がこんこんと溢れ流れていた。

『森の中を流れる水は、この水だったのか』

ぼくたちは渇きをおしとどめることはもはやできず、ぼくは右に、はまっちは左に、膝をつき口をつけて水を飲んだ。

水は新鮮で甘く生きているようだった。水が、口から喉へ、喉から胃へと、そして全身に広がり、自分たちを生まれ変わらせてくれるような気がした。

隣のはまっちを見ると、そこにはあの太陽のような笑顔をしたはまっちがいた。

ぼくたちは、思う存分飲んで満足して立ち上がった。

そうして、右側を見やると、そこには、どうして気づかなかったのだろうか、白い流れるようなローブのようなものをまとった男の人が立っていた。

その人からは光が放射されているようで、顔の輪郭もよくはわからない。

ぼくたちは吸い寄せられるように、その人の前にやってきた。

男の人は沈黙したままだ。

ぼくたちは勇気をふりしぼると、瞳を見つめた。

すると、瞳には、左の瞳に美しく成長した女性が、右の瞳には力強く成長した男性が映っていた。

ぼくたちは、それぞれじっとその姿を見つめ続けていると、お腹の底からなんとも言えない力が湧き上がってくるようだった。

それから、男の人も泉も幻のように掻き消えた。

また、ぼくたちは、鬱蒼としげる森を前にしていた。そして、不思議なことに、森の入り口にはスフィンクスがいた。

スフィンクスはウワンウアンと心の奥底にずんずん響く声で言う。

「行くも戻るもとどまるもあなたたち次第。

ただ、行くならば、道は左にひとつ、右にひとつ。

ひとつの道にひとりしか通れない。ただ、目に見えないガイドが付き添うことになろう。

この道を歩むその先にあなたたちの望むものがあるかどうかもあなたたち次第。

未来など誰も予言できず、決まってもおらぬ。

すべては道を歩むあなたたちが決める。

ここまであなたたちを導き、あなたたちと共に、あなたたちの中にいるガイドによって。」

スフィンクスはそれだけ言ってしまうと、石になってしまい、石にヒビが入り砕け散り、風によって吹き払われて、姿を消した。ただ、左にひとつ、右にひとつ、深い森へと続く狭い小道があるばかり。

ぼくたちは入り口で、小一時間ばかり、もう何も言えずにじっとお互いを見つめ合っていた。まるで顔に移りゆく空模様のように、いろいろな感情が現れては消え、現れては消えて行った、寂しさ、喜び、悲しみ、痛み、懐かしさ、執着、怒り…

その果てに、ふたりは同時に声を出した。

「またね」

そうして、以前していたように、ハイタッチをして、それぞれの道を進んでいった。

ぼくたちは、モスグリーンのオンボロのソファの上で、目を覚ました。