たっちゃんは僕の心を読めるんだ。
僕は恐ろしくなって、震えた。
けれど、頭の片隅では、『あんなにぼうっとした、暗唱聖句さえひとつも覚えられない、頭の悪い子がどうなってんだ』という気持ちがまだあった。
「優…」
たっちゃんに名前で、しかも下の名前で呼ばれたのは初めてだった。
「まだ、悔い改めが十分でないようだね、でもまあいい。そのうち、もっといろいろとわかるようになるから」
「わかるって何を?どういうこと?」
たっちゃんは何も答えなかった。ただ、意味ありげに含み笑いをした。
僕は怖くてたまらなかったが、なんとか自分を抑えて学校に行った。たっちゃんとは別の道を通って。
このことが起きてから、牧師の目は、自分の息子の光ちゃんではなく、暗唱聖句が空で言える伝道者志望の僕でもなく、たっちゃんに注がれるようになった。
牧師は、講壇から言った。
「幼子のようでなければ神の国に入ることはできないと主イエスは言われました。そして、主よ、あなたは私たちに、まさにあなたを心から信じるあなたの幼子を送ってくださいました。それは、皆さんも知っている、遠藤達也君です」
僕だけでなく、いつの間にか、たっちゃんも礼拝に出るようになっていた。
たっちゃんはすくっと立ち上がって、講壇に出ていく。
「皆さん、今、遠藤達也君のために祈りましょう」
牧師先生は、たっちゃんの頭に手を置いて祝福の祈りをしようとした。
けれど、驚くことに、たっちゃんはその手を振り払った。
「私たちが、祝福を受けるのは、人間の手を通してではなく、天から直接、父なる神と子イエスから受けるのです。
人から何かを受けるのは、乞食の子です。そして、人から受けたものはすぐに腐ったり、朽ちてしまったり、盗まれたりしてなくなってしまう。
けれど、神の子である私たちは、天の食卓について、父と子なる神から聖霊ご自身を最上の祝福としていただくのです。
この祝福は、腐ることも朽ちることも盗まれることもない。
皆さんが、求めるのは、乞食の信仰ですか、それとも神の子の信仰ですか?
もう、生温い乞食の信仰はいらない!
神の子の信仰を求め、聖霊をいただきましょう」
そこにいるのは、もうたっちゃんではないような気がした。
目がらんらんと輝き、たっちゃんではない何かが語っているようだった。
牧師やリバイバルと叫んでいる人はもちろん、熱狂を鼻で笑っている人もたっちゃんの言葉に、小学6年生の言葉に圧倒されていた。
これは何なのだろうと思った、その瞬間にたっちゃんは言った。
COME, HOLY SPIRIT!