タイトルに書いたのは、『人はみな妄想する』(松本卓也 p.405)というラカンの研究書の言葉である。
なんでも、ジェームズ・ジョイスというイギリスの作家はフィネガンズ・ウェイク(翻訳することが不可能な小説と言われている)を書くことによって、自身の心の病を癒し、精神分析を受けたものが行き着く終局点に辿り着いたと、ラカンは言っているらしい。
何もこれはジョイスだけではなく、漱石も小説を書くことで自身の神経症を克服したと言われている。
卑近な例ではあるが(前にこのことは書いたが、あえて繰り返そう)、私もこの正月に絶不調だった。頭痛はひどく、胃の調子も悪く、だるくて起きていられなかった。
何をしても良くならなかった。
それで、心にどうしたらいいか尋ねると、
「小説を書け」と言う。
こんな調子の時にと、不審に思ったが、頭を押さえながら、書いた。
すると、嘘のように、頭痛が治り、他の症状も消えたのである
ごくごく簡単に言えば、創作するほど、無意識を起動させ、解放するものはないような気がしている。
そう言えば、エリクソンもクライアントに何かを創ることを勧めていたと記憶している。
小説を書くのでも、スクリプトを書くのでも、詩や短歌を創るのでも、絵を描くのでも、作曲するのでも、彫刻を掘るのでも、アクセサリーを作るのでも、何でもいい。
人の評価などどうでも構わない。
今、ここにいる自分で何かを創造することで、症状は終結に向かうのである。